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式辞・挨拶など

平成27年度入学式 式辞

 本日春を迎えたここ横浜において、若さ溢れる新入生の皆さんを迎え、平成27年度入学式を挙行できますことは、横浜国立大学すべての構成員の大きな慶びです。皆さん、横浜国立大学への入学・進学おめでとうございます。全ての教員、職員、卒業生、在校生を代表して、心から歓迎の意を表します。また、これまで皆さんを育て、温かく見守ってこられたご列席のご家族ならびに関係の方々にも、お祝い申し上げます。

 2015年4月に入学される皆さんは、学部、大学院の合計2,823名です。その中には、アジアをはじめとする20カ国・地域からの留学生170名が含まれています。
 皆さんが学生生活をおくる横浜は、156年前、1859年に安政の開国によって開港しました。以来、明治、大正、昭和の時代を経て、日本の近代化、戦後の高度経済成長を支える中心地として発展しました。平成に入ってからも、世界の芸術、文化の入り口として活気にあふれ、国際都市として多くの観光客を受け入れ、そして日本から海外へ常に先進的に発信をしてきました。そして今や、日本第二の都市に成長し、この横浜・神奈川地域の発展を支えた活力基盤として共に歩んできたのが我が横浜国立大学です。

 まず、本学の成り立ちについてお話しします。本学は歴史的に、三つの源流を持っています。まず、教育人間科学部の前身である教員養成所が神奈川県下に設置されたのは、開港からわずか15年後の明治7年・1874年です。その後、神奈川師範学校となり、日本の近代化を推進した学校教育を支えました。大正期に入り、日本のさらなる産業発展を支える人材の育成のため、大正9年・1920年横浜工業専門学校が設立されました。これが、現在の理工学部の源流となっています。さらに、関東大震災が発生した年の大正12・1923年には、震災復興とアジア、中南米で活躍しうる人材育成のため、横浜高等商業学校が設立されました。現在の経済学部、経営学部の源流です。以上のような戦前からの伝統を踏まえ、戦後間もない1949年、師範、工業、商業という前身校を統合し、神奈川県に基盤を置く国立新制大学・総合大学として、横浜国立大学は発足しました。その後、時代の変化に対応し組織改革を行い、現在の四学部体制になりました。また、大学院に関しては、早くから修士課程のみならず博士課程を設置し、博士号を取得できる研究大学としても発展し、現在、四つの大学院として、教育学研究科、国際社会科学府、工学府、環境情報学府、都市イノベーション学府を有し、高度な研究を推進しています。

 次に、本学が掲げている四つの基本精神についてお話しします。第一の実践性とは、諸問題の本質を見極め、時代の変化に積極的に対応し、現実の生きた社会に原点を置く学問を志向する精神です。第二の先進性は、常に最先端を目指し、新しい取り組みに意欲的に取り組むチャレンジ精神です。第三の開放性は、市民社会、地域、産業界、国、諸外国が抱える課題の解決に寄与するため、社会参加を積極的にすすめる精神です。第四の国際性は、グローバルに活躍できるコミュニケーション能力と異文化理解力を有し、諸外国との交流を積極的にすすめ平和に貢献する精神であります。これらは、文明開化と高度産業の地である横浜で大きく育った精神でもあります。皆さんは、日々の学びと生活の中で、本学の四つの基本精神を思い起こすことで、学びの羅針盤としてください。

 以上のように横浜国立大学は、140年余りの歴史を有する実践的学術の国際拠点の大学として、国内外で活躍する11万人を超える卒業生・修了生を輩出してきました。さらに、海外からの留学生も毎年約九百名が在籍し、学生数の約十パーセントという留学生比率の高い大学として有名であると同時に、日本人学生の短期留学や交換留学も盛んな国際的な大学として発展してきました。本日ここにお迎えした新入生の皆さんが、このような歴史と伝統を踏まえて、横浜国立大学の一員として、更なる飛躍への活力を与えてくれるものと期待しています。
 さて、冒頭、私は、皆さんに「おめでとう」と述べましたが、この言葉は、何らかの節目を祝うものとして、人の誕生、成人式、入社式或いは結婚式などで使われています。それは単なる節目ではなく、何らかの意味で、希望のある将来や人間としての成長を願う気持ちを持って贈られる言葉です。その意味で、今日は、新入生の皆さん一人一人が、入学を節目に、どのように学生生活を送るかについて考えるために、「自由」についてお話ししたいと思います。

 おそらく多くの皆さんは、今、受験体制から逃れてまさに、「自由」を実感していることだろうと思います。特に、自宅を離れ、一人で横浜暮らしを始めた人にとっては「親から自由」になったという解放感が強いことでしょう。しかし、この「自由」は、「何々から制約されていない、英語で言うと、free from」という意味に過ぎないことを自覚して欲しいと思います。かつて「五月病」と呼ばれましたが、この「自由」に浸っているだけでは、暇な時間にもてあそばれる学生生活になってしまいます。エーリッヒ.フロムは、その名著『自由からの逃走』の中で、この意味での「自由」を消極的自由と規定しました。そして、人間はこの制約や束縛のない状態だけが続くと、心理的な不安感が生まれ、より強い他者からの支配を求めることになり、それがファシズムを生む土壌を形成すると、当時、ナチスの支配するドイツの社会状況に警告を発しました。それに対して、フロムは、積極的な意味での自由として、「何かへ向かっての自由、英語で言うと free to」こそが、人間の生活にとって大事であると述べています。これは、人間としての様々な希望、要求を自己の意志として実現できる状態を自由と規定する立場です。たとえば、移動の自由ということを考えてみますと、単に規制や制約がなくどこに行っても良いという状態が消極的自由といえます。それに対して、人間は、技術の発展に伴って、足による歩行から、自転車、自動車、そして飛行機などの発明により移動の範囲を二次元空間からさらには三次元空間まで広げてきました。それによって、車で海や山に行きたい、飛行機で空を飛び海外へ行きたい、或いはロケットで月に行きたいという要求を実現してきました。これが積極的な移動の自由ということです。

 ここで重要なことは、この意味での自由を獲得するには、それを実現するための能力を努力して発達させることが必要であるということです。すなわち、先程の例をとれば、自転車に乗るということも思い起こせば子供時代に何回も転ぶ中からバランス感覚を修得した結果です。自動車も教習所に通い数ヶ月かけて学科、実技を勉強した上で運転免許を取得することになります。飛行機にいたっては、航空力学などさらに専門的な知識と長い訓練を経てライセンスを取得し、空を飛べるという自由を獲得できるわけです。学生時代というのは、このように社会で活躍できる積極的自由を獲得するために、多様な能力を身につけ、将来への希望を持つ個人として自我を確立すべき時代だと思います。
そのために、大学或いは大学院できちっとした専門分野の知識を努力して身につけてください。

  さらに大事なことは、皆さんが積極的な自由の目標として将来の希望を持つことです。もちろん、個人的な希望が出発点になりますが、社会に出て何らかの職業に携わることになるとき、その仕事を通じて社会にどのような貢献をするかという視点での希望を是非明確にして欲しいと思います。

 現代の社会は、二一世紀に入り、グローバル化がさらに進行し、大きく変わろうとしています。グローバル化が言われはじめたのは、1990年以降のソ連・東欧諸国の社会主義体制の崩壊からです。同じ頃、アジア・中南米諸国も成長軌道に乗り始め、東西冷戦構造から、市場経済の世界的な展開が始まったことを表していました。その後2000年代に入り、中国、インド、ブラジルなど新興国が高度成長を遂げ、世界の貿易量や直接投資もアジアを中心に急速に拡大してきました。これに伴い、日本の多くの企業も海外進出先を欧米からアジアにシフトしてきました。これは、日本企業だけではなく,アメリカやEU諸国の企業も同様に、アジアを中心とする新興国に挙って進出し始めています。私は、このような流れを「グローバル新時代」として特徴付け、これを踏まえて日本の将来を考えるべきであると思います。

 アジアなど新興国では、欧米先進諸国で通用するルールとは異なり、それぞれ独自の文化、習慣があります。経済成長を遂げる一方で所得格差、都市と農村の格差も拡大し、環境破壊なども進んでいます。また、宗教、民族などの相違から紛争も絶えませんし、エボラ熱など感染症、伝染病も多く発生しています。総じて、これらの地域の持続可能な社会構築は大きな課題となっています。他方で、日本は、低成長、少子高齢化、人口減少時代を迎えて、今後のイノベーションの方向性、社会保障制度のあり方など大きな課題を抱えています。特に四年前に発生した東日本大震災からの復興はまだ途上であり、避難生活を送っていらっしゃる方が約22万5千人おり、そのうち約4千名の方々がここ神奈川県で暮らしています。被災地の復興のあり方の問題性を示しており、日本全体の地方の再生も含めた大きな課題であると思います。また、地元である横浜・神奈川地域に目を向ければ、高度な産業基盤を有している一方で、グローバル化にともなう産業空洞化、高齢化にともなう郊外住宅地・団地の衰退、地震災害リスクの高さ、水を支える水源・里山地域の荒廃など、ローカルにも将来世代へ深刻な影響を与えかねない大きな問題が存在します。

 これらの問題は、いずれも複合的な原因をもち、多様なアプローチでその解決を図り、持続可能な社会を構築することが求められています。すなわち、科学技術だけではなく、人文科学、社会科学の知見も必要になっているということです。この意味では、人文系、社会系、理工学系の学部、大学院を有する我が横浜国立大学は、それぞれの専門分野で貢献するだけでなく、それらを統合した文理融合的な研究教育を通じて、グローバル新時代に対する学問的貢献を行いうるという大きな強みのある組織でもあります。このような中で、皆さん一人一人が時代の要請する諸課題に積極的に挑戦するという目標を持ち、そのために専門的な諸能力を研鑽するために、今日からはじまる大学生活を実りあるものにしてください。

この四月から新しい横浜国立大学の歴史を刻むべく、学生の皆さんとともに私たち教職員一同も努力することをお約束し、私のお祝いの言葉といたします。

平成27年4月3日
国立大学法人 横浜国立大学長

長谷部勇一

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