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トップインタビュー「都市科学部」開設(毎日新聞社横浜支局開設110年特集)

トップインタビュー「都市科学部」開設

 神奈川県の総合国立大学として知られる横浜国立大学は来春、半世紀ぶりに新学部「都市科学部」を開設する。
国際都市・横浜にある国立大学として、日本が抱えるこれからの課題にどう取り組んでいくのか。「実践性」「先進性」「開放性」「国際性」をキーワードにした教育・研究の今後を、長谷部勇一学長に語ってもらった。
【聞き手・毎日新聞社横浜支局 澤 圭一郎支局長】

横浜国立大学は「全国区の大学」というイメージがあります。
 本学は、神奈川師範学校や横浜経済専門学校、横浜工業専門学校などの前身校が母体になって、戦後の学制改革で発足した新制大学です。現在は、教育人間科学部、経済学部、経営学部、理工学部の4学部に、教育学研究科、国際社会科学府、工学府、環境情報学府、都市イノベーション学府の5研究科をそろえた大学院を設置した総合大学です。
 かつて国立大学が「1期校」「2期校」と分かれていた際は「2期校のトップ」と称されたほどの人気を誇り、志願倍率もトップになったことがあります。全国から非常に優秀な学生が集まってくるのです。今でも、神奈川県内から入学してくる学生は3割弱。関東地方に広げても55%ほどで、45%は北海道から九州までの他の地域から入学してきます。「全国区」といっても良いと思います。
研究に力を入れている大学でもありますね。
 そうです。「研究大学」として発展してきた歴史があります。現在、学部生が約7500人に対して大学院生が約2500人います。学生の4分の1が大学院で学んでいる。これはかなり多い割合です。しかも大学院生のうち約500人は博士課程に属しています。新制大学の中では、研究分野で発展してきた大学です。
 本学では、実践性を重視した研究を行っています。実践性とは、社会の現実にある課題を見て、それを解決するために研究内容を積極的に還元するという精神です。こうした意味を込めて本学は、「実践的学術の国際拠点」を目指しています。
複雑化する社会では、課題も単純ではありません。
 確かに、現実の問題は複雑化しており、経済学だけ、あるいは工学だけで社会の課題解決を図ることはできません。いわゆる「文理融合」の視点が必要です。本学では、この文理融合の教育と研究を重視しています。
来春、50年ぶりに新しい学部が発足しますね。
 今お話した文理融合の理念を実現する形で「都市科学部」を新設することにしました。1967年の経営学部設置以来、50年ぶりです。多くの人が住み、働き、多様な活動が営まれ、様々な現象が起きる都市。そこには、多岐に渡る課題が存在しています。これまでのように人文社会、建築土木、環境など各分野が別々に都市の諸課題に取り組むだけでなく、知恵を出し合って挑むことが大事になるのです。もちろん、横浜をはじめとした日本の都市だけではなく、新興国や開発途上国の都市問題の解決にも資するような学部にしたい。海外からの留学生が本学で学び、その知見を母国で生かしてほしい。そう考えています。いわば、ローカルとグローバルの双方を網羅する考え方です。
どのような中身になるのでしょう?
 「都市社会共生学科」「建築学科」「都市基盤学科」「環境リスク共生学科」の4学科体制です。都市に住むのは人間ですが、そこには自然があり、文化があり、資源や環境といった様々なものが包含されている。すべてをバランス良く考えるために実践性を強く意識しています。学生が地域に出て調査したり、行政と一緒に考えたり、議論したりと、総合的な視点を養うイメージです。多様な視点を持って動ける人材を育成するのが目標です。
新設でいえば「教職大学院」も来春設置されますね。
 はい。小学校や中学校などで中核になるリーダー教員を育成したいと考えています。神奈川県内の学校では先生の年齢構成がアンバランスになっています。新卒の若い先生は多いのですが、中堅からベテランの先生が少ない。教育分野も、経験や知識、技術の伝承が重要なのですが、それが途絶えそうな状況です。教職大学院では、現場で経験を積んだ先生と、学部から入る学生が一緒になってチームを作りたい。「同僚性」を大事にした教員チームで、学校が抱える課題に取り組んでもらいたいと考えています。
横浜国立大学は地域貢献にも力を入れていますね。
 先ほども言いましたが、横浜・神奈川という「ローカル」と、国際的視点に立つ「グローバル」の両方の視点を大切にしています。この地にある大学として、地域にも目を向けていきます。10年前に設置した全学教育研究施設として「地域実践教育研究センター」があり、すべての学部の教員、学生が連携して地域の課題解決に向けて取り組んでいます。
 私が関わった事例を紹介しますと、以前、ある区の産業連関表を学生と調査して作ったのですが、横浜市のような大都市は産業構造を分析するデータはあるのですが、区単位になるとないのですね。そのような区の経済や産業状況を示すデータは貴重でした。それを元に対策を講じることができますから。今では地域実践教育研究センターを中心に、県内のいろいろな地域で、農業や地域産業、地域コミュニティーを振興するような実践研究をしています。例えば、大学近隣地域のひとつである和田町の商店街と一緒に活性化プロジェクトを進めたり、県西地域の観光も含めた地域再生を考えたり、大都市・横浜の子育てと介護の課題(ダブルケア)を分析したり。学生も教員も地域の課題が直接理解できて、さらに刺激ももらえるのです。今後は、さらに発展させて「地域連携推進機構」を作り、地域の産業界ともこれまで以上に連携を強めていくつもりです。
グローバル化もまた重要な課題ですね。
 本学では、現在800名を超える留学生が学んでいますが、まずはこの数を倍増することを目標にしています。留学生プログラムの一つとして、YGEP(YOKOHAMA Global Education Program)と呼ぶ私費外国人留学生プログラムを立ち上げました。これは日本語能力を有する留学生に対する入試制度で、日本語による教育プログラムを展開するものです。都市科学部では1年次に日本語や日本事情を重点的に学ぶことも組み入れています。また、「英語だけで4年間講義・授業を受けて学位が取れる」コースYCCS(YOKOHAMA Creative City Studies)を3年前に開設し、現在約40名の学生が学んでいます。英語による講義は日本人学生も受講できるようにしており、都市科学部を中心に留学生の多い国際性豊かなキャンパスになることを目指しています。なお、大学院では留学生を主な対象とした英語によるプログラムを8プログラム展開したり、工学府ではすべての講義を英語で行うなど、グローバル化に対応できる教育環境を整備しています。
「リスク共生」の研究を推進すると聞きました。
 新設する都市科学部にもリスク共生と名の付く学科があるようですが、リスクとの共生とはどういう意味なのでしょう?
 リスクとは文字通り「危険」「危険度」という意味です。できれば、社会から危険はなくなったほうがいい。しかし、現実にはゼロにできない様々なリスクがあります。地震や台風といった災害もそうですし、事故も現実には起きてしまう。リスクを完全になくすことは極めて難しいのです。ならば、リスクをどうコントロールするか、利益とのバランスをどうマネジメントできるか、という視点が必要ではないか、ということです。それがリスク共生という言葉になっています。
 例えば、地震で津波が発生します。これをなくすことはできませんので、被害を最小限にするための対策として巨大な堤防を作れば良いのか、と考えます。しかし、コストもかかるし、堤防を超えた津波がくるかもしれない。景観も損なわれる。それよりは高台への有用な避難経路を充実させたほうが良いのではないか、という発想です。
 本学は昭和42年に「安全工学科」を設けたように、早くからリスクを意識した教育研究を手がけてきました。多様な視点でリスクを分析し、社会全体の立場からどう対応するのが最適なのかを考えるのです。
 昨年、箱根が水蒸気噴火をして警戒レベルが上がりました。地元は「風評被害」といえる状況にもなり、商店街や旅館が大きな打撃を受けました。本学では、昨年度学生の視点からこの箱根の状況をどう改善できるかを考える学生コンテストを開催しました。その中で最優秀を受賞したのが、火山リスクをカバーする金融商品(デリバティブ)を作ったらどうかいう提案でした。実際に、ある損保会社がその後他の地域を対象として同じような商品を発売するくらい現実的な発想でした。このように、危険なことに対して、経済的観点や安全の観点を多角的に検討して、対応を考えていくのがリスク共生学です。本学では「先端科学高等研究院」と「リスク共生社会創造センター」を設置して、リスク共生の研究とその社会実装をを目指しています。
横浜国立大学を目指そうとしている高校生にメッセージをお願いします。
 横浜国大の学生は、真面目でしっかりしていますね。就職した先の企業からの評判もとても良い。横国のカラーが学生にしっかり出ていると思います。どの学部でも伝統的に少人数の教育であり、先生と学生の信頼関係が構築されている。学力的にも優秀な学生なので、安定度が高いのですね。これまでもお話したように、本学は実践的でグローバルな教育を重視しています。現場に出て実践も積み、国際交流など様々な経験をして自信を持った上で、自らの言葉で情報発信ができる。そんな人材を育成する大学です。是非、一緒に学びましょう。待っています。

(平成28年11月18日毎日新聞神奈川版 掲載)


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