薩本研究室 指導教員:薩本 弥生先生

教育人間科学部の薩本弥生先生の研究室を取材しました。

授業では、被服実習や被服の文化について学生に教えている薩本先生。

その研究内容は、意外なものでした。

取材・記事:学生広報サポーター 野口 瞳

美しさと快適性の両立を目指して

野口 先生が研究されていることについて教えてください


普段、実験を行っている、
ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーにて取材

薩本先生 その研究は大きく「被服の快適性」をキーワードに、快適性の中でも運動機能性の問題と温熱的な快適性の問題の2つを柱として行なっています。

温熱的快適性には、着衣の熱水分移動性が影響し、通気性や保温性などの素材要因や衣服のデザインなどの構成要因、環境の気候条件など、さまざまな要素が影響するので、人間-被服-環境をシステムとしてとらえ、複合的に評価します。

被験者による着装実験や、サーマルマネキンなどのモデル装置を用いた実験を行ったり、着衣内の伝熱現象を数値解析したりして、どのような被服が人間にとって快適なのか不快なのかを研究しています。

快適性問題のこの2つの柱の両方に関係するものとして「就寝用寝具や衣料」があります。就寝用の寝具は睡眠中の熱や水分を逃がす役割と同時に、背中で体を保持する機能を妨げないものでなければならず、快適な眠りを支えるための就寝時の寝具や衣料とはどういうものかということを、「快適ライフを科学する」という視点から研究しています。


快適性を数値化して分析

これに関連して咋年卒業した学生の卒論では、就寝時に下着を着けている若者が多いことから、快適なブラジャー、とりわけ就寝用ブラジャーと普通のブラジャーとの違いによる寝心地を睡眠中の脳波から評価する研究を指導しました。美しさを追求していく中で、自然科学的なアプローチを加えて審美性と機能性のバランスをとることが必要と思います。ブラジャーなどについても、科学的結果に基づいた啓蒙が必要です。

例えば、今の若い人たちは極端な圧迫を伴うコルセットなどはもう着けませんが、ブラジャーなどの補正用下着は着用しています。この着用は、つけかたを誤るとある意味で身体を痛めつける行為になるので、それが身体にどういう影響を及ぼすのかを客観的に示し、どこまでが許容限界かを示す必要があります。

他にもヒールの高さでの歩行性能など、いろいろなテーマがあると思っています。


研究に使用している実験室の様子

野口 人によって尺度の違う快、不快を評価するのは難しくありませんか?

薩本先生 とても難しいです。例えば下着などを着けてもらい、一番不快なものを1、快適なものを5と決め、その間で評価してもらうという形であれば比較的安定したデータがとれるのですが、特に温熱的なものになると同じ人であってもその時々の感覚によって評価が違ってくるため、快適性を客観的に評価することはまだ出来ていません。しかし、その人の中で快、不快の最大値をベースに基準化してもらい、主観申告の中で標準化して評価をしています。

快、不快を最終的に判断するのは個人差の問題として、絶対値としてその数値をあげることは出来ませんが、快か不快かという方向性ははっきり出てきます。その原因が許容範囲か、それとも限界をこえた我慢できないものなのかの許容限界を数値的に評価することができれば私たちとしては合格ラインです。

全ての研究はそういった方向性で行なっています。

「研究」と「教育」のギャップ

野口 先生が所属されている学校教育課程は教員養成課程で、先生の研究されている分野と異なる点がありますが、その点についてはどう感じていますか?

薩本先生 私は家庭科専攻で被服を教えています。2年次は一人一着ブラウスや浴衣を作る被服実習があり、男子学生も奮闘します。衣生活の自立のため、生活を豊かにするためにも最低限の裁縫技能は必要です。


被服実習で、浴衣を制作中の学生

しかし、既製服の普及に伴い家庭内での裁縫技能の伝承も望めず、小中高等学校での家庭科で実習の機会も減少する一方で、被服実習が苦手な学生が増えてきました。将来、責任をもって家庭科を担える教員を養成するために技能的なことに慣れていない学生にも、とことん追及させています。

しかし被服実習や被服の文化的側面を教えれば教えるほど、私は文科系の人間だと見られてしまい、授業が面白かったから…という理由で私の研究室に来た学生は、卒論で授業とは全く違う理系のことをやる場合が多く、ギャップを感じることも多いのが現状です。

家政学は人間生活の豊かな発展を支える文理融合の応用科学なのですが私自身がやや理系人間なもので・・・。

院生・学部生の枠を超えた教育スタイル

野口 そのような中で、先生の研究室の学生はどのようなことに関心を持っていますか?

薩本先生 やはり「被服の快適性」ということに関心があり、運動機能性と温熱的な問題ということから、快適な靴のサイズについて歩行性能やムレの関わりから研究したり、授乳期に着心地の良いブラジャーとはどのようなものかなど、テーマは幅広いです。

私の研究室は、院生と学部生も一緒にゼミを行なっています。それは研究の質の良し悪しで判断するのではなく、いろんなことを見聞きすることの重要性のほうが刺激になって良いと考えるからです。それぞれが全員分の論文を読み、自分の興味のあることだけではなく、他の人が興味のあることまで、この研究室でやっていることを広く知って卒業して欲しいと思っています。

新たな分野への挑戦

野口 それが先生の研究室の良さなのかもしれませんね。

では最後に今後の研究目標についてお聞かせください

薩本先生 それぞれのテーマでは、まだまだ未解決な部分が多いため、もっと基礎的な研究を深めて、さらに実践的な応用をしていきたいと思っています。

これまで、定常状態における快適性の研究は多いのですが、例えば汗のかきはじめといった過渡的な状態における快適性の問題を数値的に分析することはあまり行われていないので、そういった分野についてもう少し合理的に解決することがこれからの課題だと思っています。

野口 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

薩本先生が実践する教育の特徴

被服実習におけるファッションショーの開催


男子学生も被服実習を行います。
自ら着用してモデルウォーク


ナレーションも学生の中で、役割分担

薩本先生の授業「被服造形学及び実習」では、身体測定から体形に合ったブラウスの型紙を作成し、パソコンでブラウス型紙の着装シミュレーションを行い、パソコン上で完成イメージを確認しながら、ゆるみや衣服圧を計測予測した上でブラウスパターンの細部の補正を行います。

その後の縫製実習では、布地裁断→印付け→仮縫い→試着補正→本縫い→仕上げ と続く各工程で、必要な縫製技術を習得。

最終講義日には、着装テスト(ファッションショー)が行われ、自分が制作したブラウスを実際に着装して、その適合性やデザインの工夫等を、学生がお互いに評価し合うという、ユニークな授業を行っています。

もっと詳しい情報はこちらから 薩本研究室HP

浴衣実習着装テスト終了後の集合写真


2008年 薩本先生(前列中央)を囲んでSmile

2009年 夏っぽくひまわりを手に

(担当:広報・渉外室)


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