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教育学研究科修了生が第28回「石川謙賞」(日本教育史学会)を受賞

受賞情報

賞状

 大学院教育学研究科修士課程を1997年に修了された上田誠二(かみた せいじ)さん(横浜国立大学・首都大学東京等非常勤講師、在学時の指導教員:加藤千香子教授)に、日本教育史学会より第28回「石川謙賞」が授与されました。石川謙賞は1988年より日本教育史分野で顕著な業績を挙げた方々に授与されています。受賞式は、4月23日に立教大学12号館において行われました。
 上田さんは、教育学研究科修士論文「近代日本における社会教育と「歌謡」」以来、教育と社会と音楽との関係性を軸にして近現代社会の歴史的変動過程を描出しようとしてきました。その研究業績は多面的ですが、第一に取り上げられるべきは、『音楽はいかに現代社会をデザインしたか—教育と音楽の大衆社会史—』(新曜社、2010年)です。本書は、2006年に東京都立大学より博士(史学)の学位を授与された際の学位請求論文「大正・昭和戦前期の芸術教育運動に関する文化史的研究―社会秩序の担い手となった芸術教育家たち」に加筆修正が施されたものです。
 本書で対象とされているのは、1920年代から50年代にかけての日本における大衆社会の形成と再編がなされた時期です。「現代」化に伴う秩序意識や社会意識がどのように創出され、それがどのようなプロセスで社会を支えるに至ったのかという課題に、教育と音楽とを通して迫ろうとした意欲作です。在来の大正新教育史研究、芸術教育史研究に往々にしてみられる、限定された時間的範囲のなかで比較的著名な人物の言説や学校の活動の表層を紹介したり、対象を変えても同じような分析を繰り返すことに終始する、ある意味で研究史上の行き詰まりといってもよい状況を、本書は突破する内実を有しています。国家と社会と芸術家と教師とによって複雑に紡ぎだされる芸術教育運動の長期的な経緯が、新たな手法でダイナミックに論証されており、圧倒的な読後感を覚えるほどです。論証の難しい教育実践史研究としても特筆すべき内容を有するといっても過褒ではありません。
 こうした取り組み方は、近業の論文「占領・復興期の「混血児」教育―人格主義と平等主義の裂け目―」(『歴史学研究』第920号、2014年)、論文「高度経済成長期前半の「混血児」教育―能力主義と自己決定の裂け目―」(『日本教育史学会紀要』第6巻、2016年)でも十分に示され、将来的に戦後教育に関する研究史上の画期となる成果の結実も期待されます。
 すべてを紹介しきれませんが、『大磯町史4資料編近現代(2)』(2001年)、『同(3)』(2006年)、『「戦う音楽界」―『音楽文化新聞』とその時代―』(金沢文圃閣、2012年)など、資料編集・翻刻にも精力的に取り組まれています。
 この5月には、明治大学において開催された2016年度歴史学研究大会で近代史部会日本史部門を担当され、「デモクラシー・モダニズム・ファシズムと日本の音楽文化」と題して報告されました。今後の研究がどこまで深まりをみせるのか、大成が期待されます。


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