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長谷部勇一学長×田島祐規子教授(国際戦略推進機構)特別インタビュー

(左)  田島祐規子教授             (右) 長谷部勇一学長
(左) 田島祐規子教授   (右) 長谷部勇一学長
本学は2017年度にポートランド州立大学(PSU)に国際ブランチを設置しました。今回Close Up YNUの特別企画として、国際ブランチ設置のための調印式に出席された長谷部勇一学長とポートランド州立大学に造詣の深い田島祐規子国際戦略推進機構教授に、ポートランドの街と大学について対談いただきました。

長谷部学長
長谷部学長
― どのようなきっかけで、ポートランド州立大学と本学の交流が始まりましたか。
田島:私は高校の教員時代が長かったのですが、2001年にたまたま色々な状況が整って、スカラシップを得てポートランド州立大学に行き、TESOL分野で二つ目の修士をとる傍ら日本語講師として勤めました。その後幸運なことに本学にご縁がありましたので、機会があれば様々な形で本学とポートランド州立大学に貢献できればなという気持ちが常にありました。私の仕事は、教養教育における全学的な英語授業の担当とカリキュラム全般の管理と運営ですが、常々、長期留学に出るのは経済学部・経営学部の学生が多いと感じていました。しかし一方で、将来、大学院に進学する学生が多いのは理工学部だという状況が見えてきました。ところが理工学部の学生さんは、日常的にとてもタイトなスケジュールで勉強している状況なので、長期留学はとても望めず、英語教員の立場から見ると、もったいないという気持ちが常にありました。それでまず自分から動き出したのは、質のいい治安にも恵まれた場所で短期語学研修を探せないかということでした。そこで、最初に話を聞きに行ったのが母校のポートランド州立大学でした。カリキュラムの内容にも納得し最初は個人レベルでポートランド州立大学の短期語学研修を紹介し始めましたが、ちょうどその時、本学の国際化の動きと一致し、英語集中キャンプの候補地として入れていただきました。結果、今、理工学部や教育学部の学生も参加し好評を得ています。
出典:ポートランド州立大学
出典:ポートランド州立大学
長谷部:PSUとの出会いは、そういう経緯があったのですね。私が最初にポートランド州立大学に行った時も、それから昨年調印式に出席するために行った時も、英語集中キャンプに参加している学生と交流してきました。様々な学部から学生が参加していて、英語だけではなくホームステイや多様なエクスカーションが組み込まれたとてもいいプログラムでした。本当に良いところを選んでいただいたなと思っています。

田島:本来の目的は長期留学だと思いますので、短期語学研修をステップボードとして、将来長期留学もしくは本当の留学、あるいは就職後に企業から派遣される、そういうきっかけとなるプログラムになればいいなと思っています。

長谷部:まずは最初の一歩ですよね。海外の色々なところを見て、海外のキャンパスで学んだり、同じ年代の学生と交流することなどができればいいなと思います。

出典:ポートランド州立大学
出典:ポートランド州立大学
― どのような目的でポートランド州立大学に国際ブランチを設置しましたか。
長谷部:大学としては、ポートランド州立大学で英語集中キャンプのプログラムを行うという他にも、私は、ブランチを置く目的は2つあると思います。一つは、都市問題との繋がりです。2011年の東日本震災後に明らかになったことの一つは、ハードウェアとして復興するだけではなくて、ソフトウェアの部分で人と人とのつながりを普段からどのように構築していくのか、実はコミュニティづくりというのが大事だということでした。そう意味では、都市においてコミュニティをどう作っていくのか、住みやすい居住環境をどのように作っていくのか、あるいは、より良い公共交通のモデルをどのように構築していくのか、こういう都市の問題が現代において非常に大切だと感じています。都市計画や公共交通の専門の先生方に聞くと、ポートランドは都市計画や公共交通の問題に関して、聖地だと言います。私も2回行ってそれを実感しました。日本でいうと例えば成田でスカイライナーに乗車して、そのスカイライナーがそのまま街の中をトラムという形で走って、更に大学の中まで来られる。トラムだけでなくて、バスも非常に連携をうまくやっている。そして、大学と街が一体化して、街づくりに関して大学や産業界の協力がある。このような都市計画あるいは公共交通の分野で、PSUとしっかり連携していく意味があると感じています。それらの問題は、本学が今、先端科学高等研究院を立ち上げて、リスク共生学の創生という大きな目的で取り組んでいますが、そういうリスク共生の分野との連携という点で、ブランチを置く意味があると思っています。
田島:そうですね。とても賛同します。

長谷部:2番目の目的は、ローカルな連携についてです。ポートランドでは、コミュニティを通じて様々なプロジェクトが生まれて、そのプロジェクトを民間も含めて一緒にやっていますよね。その様なスタイルは今後非常に大事だと思っています。本学はグローバルに活躍できる人材を育成し、世界で通用するグローバルな研究も進める一方で、横浜や神奈川に関するローカルな問題もしっかり考えていくことを大切にしたい。横浜市は今、環境未来都市のモデルとして積極的にグリーンプロジェクトを推進していますが、ポートランドも同じように自然を大切にした環境の取り組みを進めています。環境未来都市の実現ため、横浜とポートランドが連携していけるよう大学として貢献していくというのもブランチの役割だと考えているところです。


― ポートランドの都市計画や公共交通、環境についてお話が出ましたが、実際にどのような場所だと感じますか。
田島:そうですね。私が今回ポートランドの公共交通機関に感動したのは、やっぱり自転車ですね。トラムに乗ると自転車を立てかけておく道具があって、例えば、自転車通勤を始めるためにそれを市に申請すると、キットがもらえるのだそうです。バイクロードの整備といったインフラの部分と、市役所からの支援を含めて自転車が市民権を得て、それが最終的には環境保護につながっていくという、そのトータルな考え方にとても感動したことがあります。
長谷部:これは、2年前に国際戦略推進機構長の中村先生と一緒にポートランドに行ったときに伺ったお話ですが、アメリカの都市は車優先で、都会のど真ん中に高速道路がどんどん入ってきているのですが、ポートランドはそれを全部排除してダウンタウンには高速道路を入れずに公共交通で都市を整備しているそうです。ポートランドはアメリカの中でも非常に珍しい取り組みを一番に始めた都市とのことです。

田島:アメリカではダウンタウン周辺に位置する大学は沢山あると思いますが、ポートランド州立大学はダウンタウンの中にある大学ということで、色々な層の方が大学にいると感じます。街自体も大学街ということで、話す方、出会う方、一般の方の意識の高さや知識の豊かさに感動したことが何回もありました。

長谷部:ポートランドに興味を持ったきっかけは、作家の村上春樹さんがエッセイの中でオレゴン州とメイン州の2つのポートランドの話をしていて、今オレゴン州のポートランドがアメリカの若い人たちの中で、住みたい街ナンバーワンだということ知ったことです。

田島:はい、Keep Portland WeirdとかPortland: Where Young People Go Retiredとかいうキャッチフレーズがあるようです。

長谷部:なるほどね。実際にポートランドに行って街を歩くと、おしゃれなレストランやカフェ、古本屋さん、あと古レコード屋さんも沢山あって、文化を大切にしているなと実感しました。ポートランドの人は自分たちのことをPortlandia とかPortlanderとか呼ぶらしいですね。それだけ、そこに住むことを誇りにしていて、ポートランドというブランドを確立している証拠だと感じました。

田島:はい、本当に多様で面白い都市だと思います。

出典:ポートランド州立大学
出典:ポートランド州立大学
― ポートランド州立大学と本学との違いや、本学がポートランドを参考にしていきたい点など、長谷部先生、田島先生がお考えになるところはありますか?
田島:ポートランド州立大学との違いという点では、やはり学生層ですね。移民の方が多い街なので、移民の方に英語を教えるために言語学の修士コースに在籍する方や、Businessや都市計画の分野において実際に企業で働きながらキャリアアップのためにMasterを専攻している方など、年齢層も人種もとても幅があるということを感じました。色々な目的で大学に学びに来る人が多いので、学部ではなく修士レベルで非常に選択肢が多く充実しているという印象を持ちました。

長谷部:私も田島先生と同じようなことを感じていて、年齢層それから肌の色の違いとか、ダイバーシティがありますね。これはポートランドだけではなくアメリカの大学の一つの特色で、多様性の中で教育研究が活発になっていく、そういう仕組みがあるように感じます。あともう一つは、ポートランド州立大学には塀がないですよね。ポートランドを歩いていると、いつの間にか大学に入っているし、いつの間にかレストランになっているし、街の中に大学が溶け込んでいる。トラムが大学の中を走って、大学の中に駅がある。
田島:はい、バスを入れると3種類の交通機関が大学内に入っていますね。

長谷部:ロケーションという点では、今、横浜国立大学はここ常盤台にあるのでポートランドの様にという訳にはいきませんが、我々教員や学生が更に街に入って市民の人たちや企業の人たちともっと一緒にやっていくような共同活動が今後より重要になると思っています。そういう意味では、地域実践教育研究センターや各学部でも地域の課題に関して、何らかの問題解決に向けて考えるだけではなく実際に行動していく課題実習のようなものをもっともっと広く展開し、そのような取り組みを通して、街づくりに貢献していくことが必要だと思っています。


― ポートランド州立大学の国際ブランチは今年度立ち上がったばかりですが、今後どのように発展させていくかというのは、交流活動の積み重ねが重要になってくると思いますので、教職員が協働して益々発展させていければと思います。今回は色々お話いただきありがとうございました。


【プロフィール】
長谷部 勇一

横浜国立大学長。経済学修士。環太平洋産業連関学会会長、中国産業連関学会顧問などを歴任。研究分野は比較経済システム論、産業連関論、環境経済論。
田島 祐規子

横浜国立大学国際戦略推進機構 英語教育部教授。TESOL修士(米国コロンビア大学・ポートランド州立大学)研究分野は英語教授法、外国語としての英語writing。


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