YNU CROSS TALK vol.01

横浜、神奈川ならではの成長戦略を描く

横浜銀行 頭取 川村健一 ☓ 横浜国立大学 学長 長谷部勇

本学・横浜銀行の
新たなチャレンジ

川村健一氏が頭取に就任したことをきっかけに、積極的な地域戦略を展開している横浜銀行。

新学部となる都市科学部を創設し、地域との関わりをさらに深めようとする横浜国大。

神奈川県・横浜市の活力を上げ、魅力ある地域にするために何ができるのか。

横浜国大の卒業生である川村頭取と長谷部学長が語り合いました。
メイン写真:地域実践教育研究センター「ローカル実践コアの拠点」にて

“神奈川力アップ”を掲げ、
動き始めた横浜銀行

川村頭取が就任されてから、横浜銀行は地域への取り組みをかなり強化されていると伺っています。
横浜銀行は神奈川県そして横浜市を地盤とする地方銀行です。地域に重点を置き、地域の将来に向けた活力アップのためにサービス提供をしていくことが私たちの使命です。日本が人口減少社会にあるなかで、神奈川がいつまでも活力ある地域であり続けるために、地方銀行としてできる限りのことをしたいと思っています。
具体的な戦略について教えてください。
私が頭取になって打ち出した戦略の一つに「はまぎん10年後プロジェクト」があります。ひと口に神奈川といっても、人口動態、開発の状況など、地域によってその特徴はまったく異なります。人口が増加し、新しい産業に向かっている都市部、人口流出が問題となっている西部や南部、圏央道の開通によって首都圏の流通拠点となりつつある中央部、豊かな自然環境、観光資源を有する箱根や丹沢、湘南……。同じ神奈川県でも、地域によって特色や抱えている課題はさまざまなのです。
まったくそのとおりです。横浜市は国際都市としての顔を持っていますが、神奈川全体を見ると、地域ごとに特色があって、いわば日本の縮図とも言えますからね。
現在、国をあげて「地方創生」が推進されています。私たちは、地域に根差した地方銀行ならではのサポートを積極的に行い、神奈川県の魅力を引き出していきたいと考えています。
地域ごとに10年後のビジョンを考える、という発想はとてもいいですね。
私は川崎で生まれ育ち、横浜国大入学を機に横浜という地を知ることになりました。東京に近く、東京と共に発展しようとする川崎市、歴史や文化、港町としてのアイデンティティをもった横浜市。隣同士でも全く違うということを感じました。また、私はウォーキングが趣味で、川に沿って県内のかなり広い範囲を歩いてきましたが、私流のフィールドワークによって、自然環境や文化、風土など、地域の違いや良さがよく分かりました。神奈川県のそれぞれの地域には、ダイヤモンドのように輝く魅力があります。銀行としても、金融面からそんな“神奈川力”を高めるためのサポートをしていきたいと思っています。

開かれた空間で積極的に地域とつながる

横浜国大が行っている、地域への取り組みについて教えてください。
本学の4つの学部と5つの大学院にはそれぞれ地域に関わる専門の先生方がおります。その先生方が中心となり地域との連携を図って「地域実践教育研究センター」で活動しており、その拠点として「ローカル実践コアの拠点」を設置しています。
先ほど見学させていただいて、大変素敵な空間だと感じました。
ありがとうございます。学生だけでなく地域の方々もここに集まって、さまざまなイベントや活動を行っています。
地域の方とそうした接点があるのは素晴らしいですね。大学はともすると閉鎖的になりがちです。一般の人が研究内容にふれる機会も多くはありません。
このセンターでは、学生や大学院向けの地域交流、地域創生のための副専攻プログラム、その他の研究・地域支援など多くの取り組みを行っています。「ヨコハマ地域学」・「かながわ地域学」という、まさに地域を学ぶ講義もあります。また、「地域交流科目」の中には、地域に足を運んで活動する実習も行っています。神奈川県内を地域で大別し、その地域ごとにさまざまなプロジェクトを立ち上げ、10年ほどにわたって長期的視点で研究しています。
私たちの「はまぎん10年後プロジェクト」と重なる部分がありますね。神奈川県内に180店舗を展開している横浜銀行では、すべての地域が豊かに栄えるように、主体的にサポート活動を続けていきます。

事業性評価をいかした効果的な産学連携

川村頭取は頭取就任後、精力的に取引先を訪問されていると伺っています。
はい。1年で300社の企業を直接訪問する予定です。半年近くで、すでに150社訪問させていただきました。経営者の方々とフェイス・トゥ・フェイスで、事業に対する思いや取り組み方をうかがったことで、さまざまな発見や気づきがありました。今後ともこうした活動は続けたいと思っています。
ご訪問の中でどんなことを感じましたか?
協力会社として大企業を支え続けてきた中小企業は、日本経済の活力の源です。いつの時代も新しい商品やサービスは、中小企業から誕生しました。現在、日本の中小企業も深刻な高齢化問題に直面しています。神奈川県も例外ではなく「中小企業経営者の平均年齢は約60歳」というデータもあります。事業承継、次世代マネジメントの育成など、私たちがお手伝いできることはかなりあると思います。
本学は「かながわ産学公連携推進協議会」(CUP-K)にも参加しています。理工系学部のある大学ということで、地域の企業と連携して、新しい技術や研究成果を商品・サービスという形で世の中に出していきたいと考えています。
産学連携で重要なことは、大学の得意分野や技術をしっかりと企業が把握することです。私たちは企業の「事業性評価」に力を入れています。企業の事業内容を分析・精査し、そのポテンシャルを明確にします。さらには、新事業を実現する上での課題を解決するサポートも行っています。技術的な課題がある場合は、その分野を得意とする大学と結びつけることで、共同研究や委託によって課題解決を図ります。横浜国大にもぜひご協力いただきたいと思っています。
本学も横浜銀行と連携して、地元企業の成長支援に携わっていければと思います。

数十年ぶりに大学に訪問された川村頭取を、長谷部学長自ら学内を案内。写真①ノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさん(ケニア出身、女性環境保護活動家。「MOTTAINAI」提唱者)の記念植樹モニュメント。写真②リニューアルしたての経済学部講義棟2号館講義室。写真③YNUモニュメント。

川村健一(KAWAMURA Kenichi)
川村健一(Kawamura Kenichi)

神奈川県出身。横浜国立大学経済学部卒。1982年横浜銀行入行。新横浜支店長、綱島支店長、リスク統括部長、取締役常務執行役員などを経て2016年4月からコンコルディア・フィナンシャルグループ取締役、6月から横浜銀行頭取。

学生時代に学んだことが今いかされているか

「理論経済の藪下史郎先生のゼミに所属し、ちょうどマネタリズムに注目が集まっていた時期だったので、貨幣供給量がどれだけ物価や雇用に影響を与えるかを学びました。データを計量化して多変量解析をし、仮説の立証を行うなどモデル分析は難しかったですが、いま金融市場の変化に対し、数字や相関をとらえながら判断しようとしていますから、当時勉強したことが多少なりとも役立っていると思います」

長谷部勇一(HASEBE Yuichi)
長谷部勇一(Hasebe Yuichi)

1984年一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学(経済学修士)。同年横浜国立大学経済学部助教授、その後カリフォルニア州立大学バークレー校客員研究員、横浜国立大学経済学部教授、同大学大学院国際社会科学研究科長を経て、2015年4月より現職。

対談を終えて

本学卒業生らしい誠実さとともに、アクティブな印象をもちました。足を使った現場感覚を大事にして地域を考える点など大学経営にも参考になりました。