PRESIDENT’SVision 学長ビジョン

横浜から、
我が国の未来を築く

都市型国立大学として、
知を統合し世界水準の研究大学を目指す

いま、我が国は深い霧の中に立っています。かつての成功体験が通用しなくなったこの時代に必要なのは、未来に向けた発想の転換と、次代を担う人材の育成です。

本学は、学問の発展と新たな価値の創出、イノベーションの創造に貢献するために、「知の統合型大学」として「世界水準の研究大学」を目指してきました。

多様な学術知・実践知を統合し、「新たな社会・経済システムの提案」や「イノベーションの創出・科学技術の発展」に資すること。このビジョンをさらに推し進めます。

横浜国立大学 学長

1

都市型国立大学
としての覚悟

横浜は、開港とともに日本の近代化を牽引し、文化の交差点として成長してきた都市です。激動の時代にあっても、横浜は新しい文明の入り口であり続けてきました。

その横浜に、戦後の国家再建の礎として設置されたのが、横浜国立大学です。教育を担う師範学校、産業を支える高等工業学校、経済を支える高等商業学校――この三つの実学の拠点が統合されるかたちで、本学は誕生しました。

大学が都市にあることの意味は、単なる地理的な偶然ではありません。都市は変化の只中にあり、日本の課題が凝縮されている場所でもあります。だからこそ、都市にある大学は都市に根を下ろし、人々の生活と学びを切り離さず、社会とともに歩みながら知を磨き、未来への答えを探さなければならないという意思を持ちます。

故に、横浜国立大学は、「都市型国立大学」という自らのあり方に、特別な意味を込めています。それは、都市が抱える現実の課題に、研究・教育の力で立ち向かうという覚悟です。

自然災害、地球環境、格差と孤立、エネルギーと交通、そして産業構造の転換――それらを最前線で受け止め、解決への道を切り拓くことが、本学に課せられた使命です。

本学が立地する横浜・川崎地域は、本社機能が東京に集中しているという立地的な優位性から、研究開発(R&D)機能が集積しています。都市インフラ、次世代モビリティ、エネルギー、AI、量子、半導体後工程といった最先端の研究実装が、地域社会と連携して展開されている、つまり、ここには未来を先取りする技術と、それを現場に接続する都市空間が共に存在しているのです。

先端産業や研究所の他にも、行政機関が高度に集積し、産業と知が共存しながら相互に触発し合うこの環境は、まさにわが国屈指の知識社会のフロントラインです。だからこそ、ここで学び、ここで育った人材が、産業と社会の変革を推し進めていく――。その循環(エコシステム)を創ることこそ、未来に向けた発想の転換の核心があると考えています。

神奈川県は、日本の縮図とも言うべき多様な風土を抱えています。本学は、都市に息づく知の力を、湘南、県西、三浦半島をはじめとする地域に誠実に届け、人々の暮らしと未来に静かに寄り添ってまいります。県東の都市部にとどまらず、県のすみずみに知の光を灯すこと。それが、国立大学としての本学の、揺るぎない使命であると信じています。

2

中規模大学だからこその
統合と俊敏さ

本学は、いわゆる大規模総合大学とは異なります。しかし、だからこそ可能となる俊敏な連携、柔軟な改革、そして顔の見える関係性を基盤とした統合力あり、「大学一体の知の統合」を実現させています。

高等研究院には、学内の多様な知を結集し、世界に伍する最高水準の研究拠点が育ちつつあります。これらは単なる研究成果の蓄積ではなく、社会と直接つながり、実装されてこそ意味を持つ「実践知」です。この実践性こそ、都市(地域)を実験場とし、知を社会に実装する「共創の拠点」として、世界水準の研究大学へとしなやかに道を拓く力になるのです。

3

教育を通じて
未来に手を伸ばす

高等研究院に見られるように、学内の壁を超えて研究者が結集し、世界最高水準研究拠点の取り組みを社会実装につなげる成果が着実に現れてきました。さらに、教育においても、この思想と構造を継承しようとする取り組みが進んでいます。その象徴が「先進実践学環」です。文系・理系の垣根を溶かし、実践知と学術知を統合する全学的な教育のプラットフォームとして、文理融合、学際連携、実社会との協働を柱としたこの教育プログラムは、都市の課題を自らの問題として捉え、解決に向けて考え抜く力を養います。

また、人材育成を長期的に進めるための土台として、初等中等一貫の附属学校構想も進めています。将来の理系人材育成に欠かせない女子の理系進学支援、多様なルーツを持つ子どもたち、障がいのある子どもたち、ギフテッドと呼ばれる子どもたちへの体系的支援――挑戦と包摂を両立させた新たな科学教育の姿を、本学が先頭に立って実現してまいります。

次代を担う人材は、多様性を創造の原動力として捉える姿勢から育まれます。それは未来の文明の基盤となっていくと確信しています。

4

横浜から、未来へ

横浜国立大学は、学術研究が難解なものに終わらず「暮らしを支える力」となり、社会とつながりを持ちながら未来を拓く大学であり続けます。中規模大学ならではの一体感と統合力を活かし、教育・研究・社会貢献の全領域で、都市の課題を日本の課題として受け止め、課題解決の最前線に立ち続けます。

この国の未来は、知の力なくして語れません。そして、知は、人の中にこそ宿るものです。一人ひとりの知と、大学全体の知を、社会のために結集していく。その営みにこそ、本学の存在意義があると信じています。

都市から、日本へ。
日本から、世界へ。

知が循環し、新たな価値が創発される社会。次の文明の形――未来を、静かに、しかし確かな歩みで、横浜から拓いていきたいと考えています。

確かな歩みで、次の文明のかたちをともに築いてまいりましょう。