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入学式&卒業式式辞

平成28年度入学式 式辞

  桜の花と共に若葉の緑も芽吹き始めたここ横浜において、若さ溢れる新入生の皆さんを迎え、平成28年度入学式を挙行できますことは、横浜国立大学すべての構成員の大きな慶びです。皆さん、横浜国立大学への入学・進学おめでとうございます。全ての教員、職員、卒業生、在校生を代表して、心から歓迎いたします。また、これまで皆さんを育て、温かく見守ってこられたご列席のご家族ならびにご関係の方々にも、お祝い申し上げます。

  2016年4月に入学された皆さんは、学部生1804名、大学院生904名の合計2708名です。その中には、アジアをはじめとする23の国と地域からの留学生196名が含まれています。

  皆さんが学生生活をおくるここ横浜は、157年前、1859年に安政の開国によって開港しました。以来、明治、大正、昭和の時代を経て、日本の近代化、戦後の高度経済成長を支える中心地として発展しました。平成に入ってからも、ビジネスの中心地として、また世界の芸術、文化の入り口として活気にあふれ、国際都市として多くのビジネスパーソン、観光客を受け入れ、そして日本から海外へ常に先進的に発信をしてきました。そして今や、日本第二の都市に成長しました。この横浜・神奈川地域の発展を支えた活力基盤として共に歩んできたのが、我が横浜国立大学です。

  まず、横浜国立大学の成り立ちについてお話しします。本学は歴史的に、三つの源流を持っています。まず、教育人間科学部の前身である教員養成所が神奈川県下に設置されたのは、開港からわずか15年後の明治7年・1874年です。その後、神奈川師範学校となり、日本の近代化を推進した学校教育を支えてきました。大正期に入り、第一次大戦後の日本のさらなる産業発展を支える人材の育成のため、大正9年・1920年横浜高等工業学校が設立されました。これが、現在の理工学部の源流となっています。さらに、関東大震災が発生した大正12年・1923年には、震災復興とアジア、中南米で活躍する人材育成のため、横浜高等商業学校が設立されました。現在の経済学部、経営学部の源流です。以上のような戦前からの伝統を踏まえ、戦後間もない昭和24年・1949年、師範、高等工業、高等商業という前身校を統合し、神奈川県に基盤を置く国立新制大学・総合大学として、横浜国立大学は発足しました。その後、時代の変化に対応した組織改革を行い、現在の四学部体制になりました。また、大学院に関しては、早くから修士課程のみならず博士課程を設置し、現在、五つの大学院として、教育学研究科、国際社会科学府、工学府、環境情報学府、都市イノベーション学府を有し、高度な研究を推進してきました。

  以上のように横浜国立大学は、140年余りの歴史を有する実践的学術を先進的に進める研究大学として、国内外で活躍する11万人を超える卒業生・修了生を輩出してきました。卒業生の組織として、教育・人文系として友松会、社会科学系として富丘会、理工学系として名教自然会という同窓会があり、それぞれの専門性を活かし、就職支援などを中心に大学をサポートして頂いています。また、一昨年には在学生と教職員と卒業生すべてを含む大学支援組織としてYNU校友会が発足し、学部の枠を超えた横断的な活動や海外活動支援などを始めております。国内外で活躍する卒業生との絆を深めるためにも、各同窓会やYNU校友会の活動は重要です。本日ここにお迎えした新入生の皆さんが、このような歴史と伝統を踏まえて、横浜国立大学の一員として、更なる飛躍への活力を与えてくれるものと期待しています。

  次に、本学が平成16年・2004年に国立大学法人化した際に、本学の伝統を踏まえてまとめ上げた四つの基本精神について紹介します。第一は、戦前からの伝統を踏まえた実践性です。これは、時代の変化に積極的に対応し、現実の生きた社会に原点を置く学問を志向する精神です。第二は、新制大学の中で早くから博士課程のある大学院を整備し、博士号を授与できる研究大学としての実績を踏まえた先進性です。これは、常に最先端を目指し、新しい課題に意欲的に取り組むチャレンジ精神です。第三は、地元地域を中心に、市民社会、産業界、行政が抱える課題の解決に寄与するため、社会連携を積極的にすすめるという開放性です。第四は、国際性です。これは、グローバルに活躍できるコミュニケーション能力と異文化理解力を有し、諸外国との交流を積極的にすすめ、世界の持続可能な発展と平和に貢献する精神です。これらは、開港以来の文明開化と高度産業の地であるここ横浜で大きく育った精神でもあります。皆さんは、日々の学びと生活の中で、本学の四つの基本精神を思い起こすことで、学びや研究の羅針盤としてください。

  さて、21世紀を迎え、中国やインドなどの新興国が経済成長を続ける一方、日本を含む先進諸国は、特にリーマンショック以降、低成長と財政危機に見舞われ、少子高齢化、環境エネルギー問題など多くの課題に直面しています。このような時代であるからこそ、国立大学は、学問の発展と新たな価値を生み出す知(Knowledge)の創出、イノベーションの創造に貢献する必要があります。このイノベーションという言葉は、通常、科学技術の新しい発見というように理解されていますが、現代においては、もっと広い意味で理解すべきであると本学では考えています。

  イノベーションの意味を最初に明確にしたのは、オーストリアの経済学者シュンペータでした。彼は、次の五つの項目としてイノベーションを定義しました。

  1. 新しい生産物の創出
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 新しい販売市場の創出
  4. 新しい原材料の買いつけ先の開拓
  5. 産業の新しい組織の創出

  ここに見られるように、一番目と二番目は科学技術の分野ですが、三番目以降は、マーケティング、サプライチェーン、企業組織という経営学や経済学の分野も含めたものになっています。そして、現代では物質的な生産物だけでなく、いわゆるサービスや情報も商品として大量に流通しており、人間がどのようなものを価値として考えるのか、また将来の社会では、何が求められるのか、という人間心理や社会などに関する人文科学的な知見も必要になっています。

  本学は、人文科学系、社会科学系、理工学系が常盤台の一つのキャンパスにあるという特色を有し、まさにシュンペータが唱えた意味でのイノベーションを創造する可能性にあふれた大学であると自負しています。混迷する現代において、世界の持続可能で平和な社会の実現のためのイノベーションを、皆さん方と共に創造し発展させていきたいと考えております。

  また、国立大学としてイノベーションの推進と共にグローバル化した社会で活躍できる人材の育成も、もう一つの大きな課題であると認識しています。本学は早くから活発な国際交流を進めており、毎年海外からの留学生約900名が在籍し、学生数の約10パーセントという留学生比率の高い大学であると同時に、130以上の海外の一流大学と学術交流協定を結んでいます。協定に基づいた交換留学制度は、半年から1年間、休学をせずに留学し、相手先大学で取得した単位を本学の単位として認めることができます。また、一週間から二週間の期間、協定校の学生達との討論会や現地の企業や政府機関を視察するなどの短期滞在型(Short Visit)プログラムの他、夏休みを利用した英語キャンププログラム・海外企業インターンシップなども開催しています。国際交流において、多くの学生の皆さんの壁となっているのが、語学力に自信がないという消極性です。しかし、高校時代までに基礎的な英語力は身につけているはずです。足らないのは、経験です。細かい文法などにこだわらず、自分の言いたいことを伝えたい、という強い気持ちがあれば、最後はボディランゲージも使えば何とか伝わるものです。そして何より大学での学生交流の大きな利点は、交流を通じて海外の友人を作れることです。友人との会話では、自分の専門分野の話のほか、音楽、映画、スポーツの話題で必ず盛り上がります。そのとき、外国語をさらに上達させて、もっといろいろな話をしたいという気持ちが自然に出て来るはずです。こうした経験が語学を積極的に勉強することに繋がりますし、国際コミュニケーションを充実するために日本の歴史や文化に深い関心を持てるようになります。本学の国際教育センターは、このような国際交流や留学を支援する組織で、5月にはインターナショナルウィークを開催しますので、気軽に相談に訪れてください。

  以上のような国際性と積極性を備えることがグローバル社会に必要な素養ですが、さらにもう一つ「共生社会(共に生きる)」の理念を身につけることも必要だと考えます。共生社会とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障がい者、外国人、性的少数者などが、積極的に参加・貢献していける社会です。それは、誰もが相互に人格と個性を尊重し合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える社会でもあり、Inclusive Society(内包的社会)とも言います。

  本学においても、今まで、何名かの障がい学生さんが在学し、周りの学生の皆さんに支えられて学業生活を送ってきました。その中の一人に、本学のロースクールに4年前に入学された菅原さんがいます。彼は、四肢に障がいがあるというハンディキャップを乗り越えて、昨年、ロースクールを修了し、難関の司法試験に挑戦しました。両手に障がいがあり、キーボードも使用できないため、音声入力装置を使って解答をした司法試験史上初めてのケースでしたが、見事1回で合格されました。この間の事情は、本学のホームページの学長座談会で詳しく紹介していますので、是非ご参照ください。その座談会の中で感じたことは、大学としてバリアフリーの環境作りに努力していますが、もっと大事なことは、バリアフリーという物理的なハード面の整備だけでなく、周りの学生の皆さん、私たち教職員のちょっとした心遣いや支え合いというソフト面も充実しなければならないということでした。特に印象に残ったのは、ロースクールの中での先輩から後輩へのアカデミックアドバイスや仲間同士の勉強会が勉学意欲を支えたという言葉です。障がい者や留学生も含めて、多様性(diversity)の中でいろいろな人が学び合う、学びの共同体としての大学を目指したいと思いました。本日の入学式においても、大学院環境情報学府にお一人車いすの進学者をお迎えしています。また、本キャンパスには、さらに数名の障がい学生の方も在学しております。学生の皆さん一人一人が共生社会のマインドを持ち、いろいろな場面で支え合い、学びの共同体を本学において実践されることを期待します。

  結びとして、本日の入学式のパンフレットで触れたアルフレッド・マーシャルの言葉を紹介します。マーシャルは、1842年にイギリスで生まれ、アダム・スミスと並んで経済学の父とも言われる経済学者です。彼は、1885年にケンブリッジ大学教授に就任した際に、学生に向かって就任演説をしました。その当時、新興国であったアメリカの成長などもあり、イギリスは長期間の不況に見舞われ、ロンドン市内には失業者があふれていました。そのような状況を実際に見ていたマーシャルが、学問は冷静に論理的に行う必要がある。しかし、貧困を解消するという温かい心も同時に必要であるという意味を込めて、 ‘Cool heads but warm minds’ と述べました。新入生の皆さんが、これからの大学、大学院での学びにおいて、現代の諸問題に対してそれぞれの学問的立場から論理的にアプローチするだけでなく、人間に対する温かい心を持って精進されることを強く期待します。そして、この4月から新しい横浜国立大学の歴史を刻むべく、学生の皆さんとともに私たち教職員一同も努力することをお約束し、お祝いの言葉といたします。

平成28年4月5日
国立大学法人 横浜国立大学長

長谷部勇一

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