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入学式&卒業式式辞

平成30年度卒業式・修了式 式辞

  桜の花も咲ほころぶ本日ここに、卒業・修了される皆さんをお迎えし、平成三十年度横浜国立大学学位記・修了証書授与式を挙行できますことは、本学にとって大きな慶びであります。ただ今、学部卒業生1,683名、大学院修了生833名及び専門職学位課程修了生23名の方々に学位記および修了証書をお渡ししました。ご卒業・ご修了、誠におめでとうございます。皆さんの入学以来の勉学の積み重ねが、本日の学位記の授与につながったものであり、皆さんのご努力に敬意を表します。列席の理事・副学長・監事・部局長・評議員をはじめ教職員一同を代表して、心からお祝い申し上げます。

  また、ご多忙の中をご出席賜りました横浜市、校友会、同窓会のご来賓各位に対しましても、厚く御礼申し上げます。そして何より、卒業生の皆さんを今まで温かく見守り育ててこられたご家族・保護者の皆様には、本日この日を心待ちにしておられたことと存じます。誠におめでとうございます。皆様の本学へのこれまでの多大なご支援に心から感謝申し上げます。

  そして、本日の卒業生の中には、177名の留学生が含まれています。留学生の皆さんは、遠く祖国を離れ、異なる言語、文化、習慣の壁を克服し、横浜国立大学での学びを貫徹されました。これまでの皆さんのご努力に深く敬意を表します。これからは本学で身につけた知識や技術を母国の発展のために大いに役立てて下さい。さらには、母国と日本との友好の架け橋となることを期待しています。

  さて、皆さんは、本日、それぞれの学部、大学院での卒業論文、修士論文、博士論文を書きあげ学位を取得され、本学での研究活動に区切りをつけたことになります。そして、明日からは、社会へ或いは大学院へ羽ばたく節目にあたり、新たな挑戦に挑む日でもあります。そこで、研究する、或いは、研究し続けることの重要性について考えていただこうと思います。

  まず、そもそも研究とは何でしょうか。それは、自ら設定した課題に対して、先行する研究を踏まえ、実験、観察、調査などで明らかになった事実等を元に、自分自身の頭で考え抜いた発想に基づいて新たな命題を体系的、論理的にまとめ表現することです。ここで、重要なポイントは、自らが問い、自らの頭で考え、自らの言葉で表現する、という点にあります。加えて、日本の大学における研究の特色として、研究室、ゼミナール制度があります。それは、教員と学生がある専門のテーマの下に集まり、各自の問題意識を共有しながら、共同で研究を行うシステムです。他の国でも、論文指導の制度はありますが、基本的には一対一の関係で指導を受けるのが一般的であり、日本のこの制度は世界でも誇るべき特色を有しています。現に、多くの卒業した留学生の評価が一番高いのは、ゼミや研究室において、教員やゼミ・研究室仲間との討論を通じて切磋琢磨した経験をあげています。このように、大学における研究では、そのプロセスにおいて教員を含む他者とのディスカッションが含まれているという点も重要です。

  以上の二つのポイントで示した「研究すること」は、何故重要なのでしょうか。それは、これからますます複雑化する予測不可能な時代にこそ、研究する精神が必要になるからです。二十一世紀に入り、世界は大きく変動しています。2008年のリーマンショックは経済の景気変動が一瞬にして世界規模に波及することを示しました。国際政治では、新自由主義の盟主と自他共に認めていたアメリカがひとりの大統領の登場で保護主義に転換し、ヨーロッパ連合EUにおいても主要メンバーのイギリスが離脱を決めるというBrexitにより未だに大きな混乱がもたらされています。科学技術の分野でも、AIや量子コンピュータなど科学技術が急速に発展し、自動運転、電子決済をはじめ社会生活にも大きく入り込もうとしています。また、台風、地震、異常気象など自然災害もかつてないグローバルな規模で発生するようになっています。このように、人間社会、自然界において様々な変化が複雑に絡み合って進行する中、今まで常識であった知識や経験は陳腐化し、役に立たなくなることが多く、常に学び、問い続けること、すなわち研究する精神が大事になるということです。

  では、これからも研究し続ける、或いは学び問い続けるためには何が必要でしょうか。そこには、二つのことがあると思います。 一つめは、好奇心です。社会や自然の移り変わりの中から、ふとした疑問、気づきを大切にし、問題関心を広く持つことです。そのためには、読書することがまず大事でしょう。読書とは、ある意味、時間軸上の過去との対話であり、空間軸で言えば、日本を超えた世界の知を得る営みです。このような学びから、常に心の中にアンテナを張ることで、問題関心をもち続けることができるようになると思います。 二つめは、議論、討論する仲間をもつことです。研究で大事な点は、独自性・オリジナリティであり、これ自体は個人的な営みですが、真にオリジナルというのは独りよがりでなく、他の人との違いを理解し、自分の見解を相対化できることが大事になります。そのためには、ゼミや研究室で行ってきたように、身近に議論できる友人を持つことはもちろんですが、異業種、異分野の人々との対話も欠かせません。実はこの異分野との対話・交流は、イノベーションにも通じるものです。

  オーストリアの経済学者シュンペーターは、近代社会においては企業者による創造的破壊が連続して起こることにより経済発展が生じるとし、これをイノベーションと呼びました。技術開発による新製品の生産だけでなく、需要先の開拓、原材料の新しい供給元の開拓、企業内組織の変革などをうまく繋げ、新しく結び合わせる能力としての『新結合』がイノベーションの本質であるとも述べています。言い換えると、科学技術という自然科学だけでなく、経営や経済という社会科学を含む必要性があり、更に敷衍すれば、どういう新製品、新サービスが好まれるのか、という人間の価値意識に関する人文科学的な要素も含まれており、イノベーションは文系と理系、双方の知見、いわゆる文理融合によりもたらされるということになります。友人との対話、そして異分野、異業種の人々との対話を意識的に求めることで、新たな課題を発見し、その研究を推し進め、イノベーティブな活躍が出来るようになると思います。

  他の人との対話という点では、ゼミや研究室の卒業生会、そして学部同窓会を通じた卒業生の皆さんとの交流が大いに役立ちます。本学には、教育人文系同窓会である友松会、社会科学系同窓会である富丘会、理工系同窓会である名教自然会があり、現役学生の支援、卒業生同士の交流活動を活発に行っております。また、同窓会の横の交流を繋ぐ組織としてYNU校友会では、まさに異業種、異分野の交流や海外の交流を推進しています。毎年開かれる各同窓会の総会、大学主催のホームカミングデーでもある横国Day、海外での同窓会開催の折は積極的に参加してください。専門性や年齢、国境を超えた交流は皆さんの学びや研究を継続する上で、知的好奇心を高め、多様な人間関係を構築する良い機会となるでしょう。

  結びとなりますが、人生において好奇心を持ち続ける重要性を述べた物理学者のアルベルト・アインシュタインの言葉を贈ります。過去から学ぶこと、現在のために生きること、明日のために希望を持つことのほか、最も重要なことは疑問を持ち続けることであるという主旨で、次のように述べています。

  Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.

  明日からも旺盛な好奇心を失わず、常に学び研究し、豊かな人間関係を築き続けてください。そして、未来に向けて旅立たれる皆さんが、心身ともに健やかで、母校となる横浜国立大学で学んだことをプライドとし、二十一世紀社会を切り開いていく推進役として成長されますことを心から祈念しまして、私の式辞といたします。

平成31年3月26日
国立大学法人 横浜国立大学長

長谷部勇一

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