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【プレスリリース】次世代半導体配線構造ルテニウム/エアギャップの寿命ばらつきを解明

LSTC-imec国際連携成果:1nm以降ロジック半導体の信頼性設計指針を確立

本研究のポイント

• 次世代ルテニウム/エアギャップ配線において、製造ばらつきが絶縁寿命のばらつきを左右することを統計的に解明
• ウェハ中央と外周で寿命が異なる原因が、エアギャップ幅の微小な形状差にあることを実証
• 2nm世代以降、さらには1nm世代以下のロジック半導体に向けた高精度な信頼性設計指針を確立

次世代半導体配線構造の信頼性評価手法確立
次世代半導体配線構造の信頼性評価手法確立

概要

 技術研究組合最先端半導体技術センター(以下「LSTC」という)はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」における「Beyond 2nm及び短TAT半導体製造に向けた技術開発」の下、1nm世代[用語1]以下のロジック半導体[用語2]で有力視されるルテニウム/エアギャップ(Ru/AG)配線について、製造ばらつきが絶縁寿命に与える影響を統計的に解明し、高信頼性化に向けた新たな技術指針を開発しました。本成果により、1nm世代以降の次世代配線構造において、寿命予測と信頼性評価の高精度化が可能となり、AIサーバーやスマートフォン向け半導体のさらなる高速化・低消費電力化への貢献が期待されます。
 なお、本研究は、LSTCの準組合員の国立大学法人横浜国立大学、共同実施先である国立大学法人電気通信大学と、再委託先であり、ベルギーの世界的半導体研究機関である Interuniversity Microelectronics Centre(imec)による国際連携共同研究として実施されました。この技術の詳細は、2026年6月1日から米国サンノゼで開催される国際会議「IEEE International Interconnect Technology Conference 2026」において、横浜国立大学大学院理工学府博士課程後期の中山航平氏により発表されます。

社会的背景

 現代のスマートフォンやAIサーバーを支えるロジック半導体では、トランジスタだけでなく、信号を伝える配線の微細化も極限に近づいています。従来広く使われてきた銅配線は、線幅が細くなるほど電気抵抗が増え、信号の遅れや消費電力の増大、発熱の深刻化が避けられないという課題を抱えています。この限界を打ち破る次世代技術として1nm世代以降(オングストローム世代)で期待されているのが、ルテニウム(Ru)[用語3]配線と、配線間に空気の絶縁層を設けるエアギャップ(AG)[用語4]技術です。ルテニウムは極細でも抵抗が増えにくくかつ原子移動もしにくく、エアギャップは配線間の不要な電気的結合を抑えることで、信号遅延を大幅に低減できます。そのため、1nm世代以降のロジック半導体で有力な候補とされています。
 一方で、これらの配線は構造が非常に微細で複雑なため、製造時に生じるわずかな寸法ばらつきが寿命や壊れにくさに大きく影響する可能性があります。しかし、こうした製造ばらつきと寿命分布の関係を定量的に評価する方法は十分に確立されていませんでした。そこで今回、ルテニウム/エアギャップ配線において、製造工程に起因する微小な形状ばらつきが絶縁寿命に与える影響を統計的に解明し、次世代ロジック半導体の高信頼性化を支える設計・製造指針を開発しました。

開発の経緯

 このような極めて微細な配線構造の信頼性評価には、極紫外光(EUV)リソグラフィーを用いた加工技術が不可欠です。しかし、現在の国内環境では、そのような最先端の開発を実施することは容易ではありません。
 そこでLSTCは、最先端装置群を有する国際コンソーシアム imec と連携し、300mmウェハ[用語5]を用いた次世代新配線材料およびその信頼性に関する研究を進めています。今回の成果は、1nmノード以下のロジック半導体への適用が有力視されるルテニウム/エアギャップ配線を対象に、その微細配線構造における詳細な信頼性評価を実施することで得られたものです。
 なお、本成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/Beyond 2nm及び短TAT半導体製造に向けた技術開発」(JPNP20017、委託先: 技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC))の一環として得られたものです。

研究の内容

 次世代ロジック半導体で有力視されるルテニウム配線とエアギャップ構造について、長期間の使用で絶縁膜が壊れる現象(TDDB[用語6]: 絶縁破壊寿命)のばらつきを詳しく調べました。特に、製造工程でわずかに生じる寸法の違いが、寿命にどのような影響を与えるかを統計的に解析したことが大きな特徴です。
 評価には、幅10nmの極細ルテニウム配線を向かい合わせに並べた専用の試験構造を用いました。配線間には空気の隙間(エアギャップ)を設け、その間隔を10〜14nm(メタルピッチMP:20-24nm)の範囲で変化させました。100℃の高温環境で電圧を印加し、絶縁膜に電流漏れが急増するまでの時間を測定することで、寿命を評価しました。
その結果、配線間隔が広いほど寿命が長くなることを確認しました。これは、配線間の電界が弱まり、絶縁膜への負担が小さくなるためです。さらに、同じチップ内でも寿命に場所による違いがあり、ウェハ中央では長寿命、外周部では短寿命となる傾向を見いだしました。
 この原因を詳しく調べるため、配線の容量測定や電子顕微鏡観察を行ったところ、ウェハ中央ほどエアギャップがわずかに広く、外周では狭くなることが分かりました。すなわち、製造工程で生じるごく小さな形状ばらつきが、配線の寿命差として現れていることが明確に示されました。
 さらに統計解析により、配線ピッチ[用語7]が22〜24nmでは、こうした寸法ばらつきが寿命ばらつき[用語8]の主因であることを確認しました。一方で、最も微細な20nmでは、寸法差だけでは説明できないばらつきも現れ、製造の難しさに伴って局所的に欠陥が集中しやすくなる可能性が示されました。
 今回の成果により、ルテニウム/エアギャップ配線において、製造時に生じるナノメートル級のわずかな形状ばらつきが寿命を大きく左右することを定量的に示し、その影響を統計的に予測できる道筋を初めて明らかにしました。これにより、従来は評価が難しかった2nm以降、さらには1nmノード以下の超微細配線でも、設計段階から寿命ばらつきを織り込んだ高精度な信頼性設計が可能になります。AIサーバーやスマートフォン向けの先端ロジック半導体において、さらなる高速化・低消費電力化・長寿命化を同時に実現する基盤技術として期待されます。

今後の予定

 今後は、ルテニウム/エアギャップ配線間の電界分布や局所的な欠陥発生を考慮した、より高精度な寿命予測モデルの開発を進めます。あわせて、今回確立した統計解析技術を2nm以降、さらには1nmノード以下の超微細配線へ展開し、寿命ばらつきを見込んだ高信頼性配線設計へ応用していきます。将来的には、AIサーバーやスマートフォン向け先端ロジック半導体の量産技術確立に貢献することを目指します。

用語解説

[用語1]
2nm世代/1nm世代:半導体の微細化世代を示す指標。数値が小さいほど高性能・低消費電力な最先端技術を意味する。

[用語2]
ロジック半導体:スマートフォンやAIサーバーの演算・制御を担う半導体。CPUやGPU、SoCなどに用いられる。

[用語3]
ルテニウム(Ru):次世代半導体配線に使われる金属材料。従来の銅よりも、極細化しても電気抵抗が増えにくい特長を持つ。

[用語4]
エアギャップ(AG):配線の間に設けた空気の層。電気的な干渉を減らし、信号の遅れや消費電力を低減する技術。

[用語5]
ウェハ:半導体チップを多数作り込む円盤状のシリコン基板。1枚のウェハ上で位置による特性差が生じることがある。

[用語6]
TDDB(Time-Dependent Dielectric Breakdown):配線間の絶縁膜に長時間電圧を加えたとき、徐々に劣化して最終的に絶縁破壊に至る現象。半導体配線の寿命評価に広く用いられる。

[用語7]
配線ピッチ(MP):隣り合う配線の中心間距離。値が小さいほど高密度で高性能な配線構造となる。

[用語8]
寿命ばらつき:同じ設計の配線でも、製造時のわずかな寸法差などにより壊れるまでの時間に差が生じること。

資料

研究者プロフィール

井上 史大新しいウィンドウが開きます
大学院工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院 教授

お問い合わせ先

<研究に関すること>
横浜国立大学 大学院工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院 教授 井上 史大
メールアドレス: inoue-fumihiro-tyynu.ac.jp

<報道に関すること>
横浜国立大学 総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: pressynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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