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【プレスリリース】超伝導回路で超小面積な算術論理演算ユニットを実現

本研究のポイント

・超伝導SFQ回路とユナリー計算を組み合わせた新しい演算方式を提案
・ALUの回路規模を従来比約88.2%削減
・約72 GHzの高速動作を実験で確認
・消費電力は約58.9 µWと低消費電力
・AI・画像処理向け低精度計算への応用に期待

研究概要

 横浜国立大学総合学術高等研究院の韓澤宇助教(研究当時博士課程後期学生)、同大学先端科学高等研究院/総合学術高等研究院の吉川信行教授、同大学大学院工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院の山梨裕希教授らの研究グループは、超伝導単一磁束量子(SFQ)回路を用いた「ユナリー演算型算術論理演算器(Unary ALU)」を開発し、従来の超伝導ALUに比べて大幅な小型化に成功しました。研究チームは、わずか183個のジョセフソン接合(JJ)で動作する超低ハードウェアコストALUを設計・試作し、約72 GHzでの高速動作を実験的に実証しました。本研究成果は、超伝導コンピュータにおける演算回路の高密度化・低消費電力化に向けた新たな設計手法を示すものであり、AI、画像処理、低精度ニューラルネットワークなどへの応用が期待されます。
 本研究成果は、国際論文誌「Superconductor Science and Technology」に掲載されました。

社会的な背景

 近年、半導体の微細化限界が近づく中、超高速かつ低消費電力で動作する超伝導SFQ回路[用語1]が、次世代コンピューティング技術として注目されています。しかし、超伝導回路ではジョセフソン接合やインダクタが大きな面積を必要とするため、大規模集積化が課題となっていました。一方、ユナリー演算[用語2]は、数値を2進数列中の「1の個数」で表現する計算方式であり、単純な構成で演算回路を実現できる特徴があります。しかし、2進数列を1ビットずつ処理するため、一般的には計算時間が長くなるという課題がありました。

研究成果

 本研究では、研究グループは、SFQ回路の超高速動作によってユナリー計算の遅さを補えることに着目し、両者を組み合わせた新しい演算回路アーキテクチャを提案しました。このアーキテクチャに基づき、加算、減算、最大値・最小値演算、論理演算などを実行可能なALU[用語3]を設計しました。従来のALUが複雑な加算器を中心に構成されるのに対し、本研究では単純な論理ゲートとフリップフロップのみで多機能演算を実現しています。
 試作回路は、産業技術総合研究所(AIST)の10 kA/cm2 Nb超伝導プロセスを用いて作製し、液体ヘリウム温度(4.2 K)で動作評価を行いました。測定の結果、提案回路は約72 GHzでALUが正常動作することが確認されました。
 提案したユニタリALUは、従来のビットシリアル型SFQ ALUと比較して、SFQ回路のスイッチング素子であるジョセフソン接合の数を約88%、回路面積の約80%削減を達成しました。4ビット精度条件では、ジョセフソン接合1個あたりの演算性能(Performance Density)が既存SFQ ALUを上回ることも示されました。半導体CMOS回路との比較では、最速のCMOS回路に比べて約21.8倍高速であり、ビット当たりエネルギー消費も約20分の1となる可能性が示されました。

図 (a)設計したテスト用回路のチップ写
図 (a)設計したテスト用回路のチップ写

図 (b) 低温環境下(4.2 K)における高速動作時のバイアスマージン特性
図 (b) 低温環境下(4.2 K)における高速動作時のバイアスマージン特性

今後の展開

 本研究は超伝導回路によるユナリー演算回路の高速動作を初めて実証したものです。今後は複数ALUの並列化による高性能化や、ユナリー方式に基づく超伝導マイクロプロセッサの開発を進める予定です。本技術は、AI推論、画像処理、エッジコンピューティングなど、低消費電力かつ高効率な演算が求められる分野への応用が期待されます。

謝辞

 本研究はJSPS科研費JP24KJ1148、JP24H00311とJP25K01284、SCAT研究助成の助成を受けたものです。本研究で使用された回路は、国立研究開発法人産業技術総合研究所の超伝導量子回路試作施設(Qufab)において作製されました。

用語解説

[用語1]
超伝導単一磁束量子回路(Single Flux Quantum Circuit: SFQ回路):超伝導素子を用いた回路の一つ。超伝導体内の磁束の最小単位である磁束量子(Φ0)の有無によってディジタル情報を表現する。

[用語2]
ユナリー演算:数値を2進数列中の「1の個数」によって表現する演算方式。単純な論理回路で算術演算を実現できるため、回路規模を小さくできる利点を持つ。一方で、高精度な演算には長い数列が必要となるため、計算時間が長くなる特徴がある。

[用語3]
Arithmetic Logic Unit (ALU):マイクロプロセッサを構成する主要要素の一つであり、論理演算や算術演算などを実行する演算回路である。

論文情報

掲載誌 Superconductor Science and Technology
タイトル A Superconducting Unary Arithmetic Logic Unit with Ultra-Low Hardware Cost
著者 Zeyu Han, Nobuyuki Yoshikawa, Yuki Yamanashi
DOI 10.1088/1361-6668/ae7839

資料

研究者プロフィール

山梨 裕希新しいウィンドウが開きます
大学院工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院 教授

韓 澤宇新しいウィンドウが開きます
総合学術高等研究院 助教

吉川 信行新しいウィンドウが開きます
先端科学高等研究院/総合学術高等研究院 教授

お問い合わせ先

<研究に関すること>
横浜国立大学 大学院工学研究院/先端科学高等研究院/総合学術高等研究院 教授 山梨 裕希
メールアドレス: yamanashi-yuki-krynu.ac.jp

<報道に関すること>
横浜国立大学 総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: pressynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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