• お問い合わせ
  • アクセス
  • 検索
  • Language
  1. YNU
  2. 大学案内
  3. 広報活動情報
  4. プレスリリース一覧
  5. レーザー加工初期過程からの放射計測に成功

【プレスリリース】レーザー加工初期過程からの放射計測に成功

テラヘルツ放射波形計測により加工初期過程のメカニズムに迫る

本研究のポイント

・フェムト秒レーザー加工初期過程で放出されるテラヘルツ波の波形を高感度に検出することに成功
・テラヘルツ波は加工初期の電荷分離過程により誘起されており、メカニズムの解明に迫る重要な情報を与えることが分かった
・本研究で得られた知見は今後レーザー加工の効率や加工形状を最適化するために重要な情報となるほか、本手法はレーザー誘起プラズマの物理の解明などにも適用できる

研究概要

 横浜国立大学の後藤亮哉大学院生(研究当時)・渡辺璃玖人大学院生、熊谷洸毅大学院生(研究当時)、同大学総合学術高等研究院のMarvin A. Weiss助教、同大学大学院工学研究院/総合学術高等研究院の田原弘量准教授、片山郁文教授、慶応義塾大学の玉置亮特任講師、芝浦工業大学の武田淳特任教授、株式会社ニコンの浅井岳氏、瀧川雄一氏の研究グループは、高感度でテラヘルツ電場波形を検出するシングルショットテラヘルツ時間領域分光法[用語1]を用いて、フェムト秒レーザーアブレーション初期過程から放出される微弱なテラヘルツ波[用語2]の波形を計測することに成功しました。また、得られた結果をレーザー加工された表面の形状と比較することで、初期の電荷放出過程が加工結果に大きな影響を与えることを見出しました。これは、従来は見ることが難しかった初期の電荷放出を可視化するものであり、レーザー加工のメカニズム解明に向けた大きな一歩であると言えます。本手法は今後、レーザー加工の最適化や、レーザープラズマ物理の解明のために有効であると期待されます。
 本研究成果は、国際科学雑誌「Journal of Applied Physics」(2026年7月29日付:米国東部時間)に掲載され、Featured Articleに選定されました。

レーザー加工初期過程の模式図
レーザー加工初期過程の模式図

社会的な背景

 フェムト秒(10-15秒)の時間でのみ光を発する超短パルスレーザーを材料に集光すると、瞬間的に材料が蒸発し、精度よく加工できることが知られています。これは、パルスの時間幅が極めて短いため、熱による形状の変化が起こる前に物質が取り除かれるためであると考えられています。この過程を用いたフェムト秒レーザー加工[用語3]は、ほぼすべての材料を精密に加工できることや、非接触で精度の良い加工ができることなどから、半導体を含む様々な産業界でも盛んに活用されています。しかしながら、加工の初期過程は極めて短い時間スケールで起こることや、加工後の表面形状は大きなゆらぎを持ち、照射パルスごとに変化することなどから、そのメカニズムの理解は進んでいませんでした。

研究成果

 そこで本研究では、フェムト秒レーザーを照射した際に発生するテラヘルツ波に注目し、その波形をパルスごとに計測することを試みました。また、加工形状との相関を明らかにするために、各パルスを照射した後に表面の断面形状を計測するシステムを構築し、テラヘルツ放射のパルス波形と加工結果を比較しました。その結果、レーザー加工初期過程で放出されるテラヘルツ波の波形は、加工の進行や励起密度に応じて変化することが明らかとなり、その変化がレーザー加工レートの変化と対応していることがわかりました。
 テラヘルツ放射は、表面で瞬間的に電流が流れることによって生じることから、レーザー加工初期過程でテラヘルツ波形が得られることは、加工初期に瞬間的な電流が流れており、電荷分離が起こっていることを示唆しています。また、その波形が加工結果と対応していることは、初期にフェムト秒レーザーによって誘起される電荷分離が、加工の実現において重要な役割を担っていることを示しています。このように従来は計測が難しかった、加工初期の微弱なテラヘルツ放射が計測できることは、レーザー加工初期過程の解明に向けた大きな一歩であると言えます。

今後の展開

 本研究では、テラヘルツ波形をリアルタイムで計測することのできるシングルショットのテラヘルツ時間領域分光法によって、励起パルスごとにその波形がゆらぐレーザー加工においても波形計測が可能であることを見出しました。このことは、本手法が今後、ゆらぎを伴う様々な現象の超高速ダイナミクスを可視化するために有効であることを示しています。また、本研究で得られたレーザー加工初期過程に関する成果は、今後レーザー加工の効率や加工形状を最適化するために重要な情報となるほか、近年レーザー核融合と関連して注目されるレーザー誘起プラズマの物理の解明などにも適用できるものと考えられます。

謝辞

 本研究は、日本学術振興会・科学研究費助成事業(課題番号:JP-25H00829、JP-23K23258)、総務省・持続可能な電波有効利用のための基盤技術研究開発事業 (課題番号:JPMI250310003)、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業CREST (JPMJCR2544)の支援を受けて行われました。

用語解説

[用語1]
シングルショットテラヘルツ時間領域分光法:フェムト秒レーザーを用いてテラヘルツ波の波形をリアルタイムで計測する技術。反射型エシェロンミラーなどの光学素子を用いてレーザーパルスを多数のパルスに分割して計測に用いることによって、レーザー1パルスでテラヘルツ波形の計測を行うことができる。これによって、ゆらぎを伴う現象や不可逆な現象におけるテラヘルツ波の計測が可能である。

[用語2]
テラヘルツ波:1ピコ秒(10-12秒)程度の周期で振動する電磁波の呼称。多くの物質を透過する周波数帯であることから、イメージングへの応用や、大容量の無線通信、物質・材料の分光分析への応用が盛んに研究されている。

[用語3]
フェムト秒レーザー加工:レーザー光を用いて材料の加工を非接触で行う手法。ほぼすべての材料を加工できるほか、フェムト秒のパルスレーザーを用いることによって、熱変形の影響を低減することができ、精密な加工を実現できる。

論文情報

掲載誌 Journal of Applied Physics
タイトル Ultrafast charge emission at terahertz frequency in high-intensity femtosecond laser ablation process
著者 Ryo Tamaki, Ryoya Goto, Rikuto Watanabe, Koki Kumagai, Marvin A. Weiss, Hirokazu Tahara, Jun Takeda, Gaku Asai, Yuichi Takigawa, and Ikufumi Katayama
DOI 10.1063/5.0325476

資料

研究者プロフィール

片山 郁文新しいウィンドウが開きます
大学院工学研究院/総合学術高等研究院 教授

田原 弘量新しいウィンドウが開きます
大学院工学研究院/総合学術高等研究院 准教授

Marvin A. Weiss新しいウィンドウが開きます
総合学術高等研究院 助教

お問い合わせ先

<研究に関すること>
大学院工学研究院/総合学術高等研究院 教授 片山 郁文
メールアドレス: katayama-ikufumi-bmynu.ac.jp

<報道に関すること>
総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: pressynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


ページの先頭へ