【プレスリリース】新たなサイバーインテリジェンス研究拠点 SPIRALを設立
概要
国立大学法人横浜国立大学(学長:梅原 出、以下「横浜国立大学」)は、2026年10月1日、サイバーセキュリティに関する研究・教育・実践を一体的に推進する新たな拠点として、「サイバーセキュリティ実践教育研究センター(Center for Security Practice, Intelligence, Research, and Advanced Learning: SPIRAL)」を設立しました。SPIRALでは、10年以上の研究実績を有するサイバー攻撃観測・分析知見を研究・教育・実践・社会へ還元する仕組みを構築します。
センター設置の背景
近年、サイバー攻撃は、国家的な背景を持つ攻撃から生成AIを悪用した攻撃まで、多様化・高度化しています。これらの脅威に対応するには、実際のサイバー空間を継続的に観測して変化を捉え、得られた知見を迅速に社会へ還元する仕組みが重要です。
こうした現状を踏まえ、SPIRALでは、横浜国立大学が10年以上にわたり実際のインターネットを継続的に観測・分析することで蓄積してきた実データを核とし、研究・教育・実践領域が連携する新たな組織モデルを創出し、先端研究、人材育成、セキュリティ実践、社会共創を一体的に進めてまいります。各機能が互いの成果を活用し、その活動から生まれる新たなデータと知見を再び循環させる仕組みが、SPIRALの中核です。
研究領域では、実データと生成AIをはじめとする最新技術とを組み合わせることにより、未知の脅威の発見、新たな攻撃手法の分析・予測、対策へとつなげる「国産サイバーインテリジェンス」の創出・拡充を目指します。また、現代社会に欠かせない暗号技術について、次世代を見据えた新たな暗号技術の創出と応用、社会実装を目指します。
教育領域では、研究成果や研究で得られた実データを迅速に授業などで活用するとともに、学生が大学組織および連携する外部組織などの安全を守る活動へ参加することにより、組織のリスクマネジメントやセキュリティオペレーションに必要な知識を習得する実践的な教育プログラムを創出します。また本学と包括連携協定を締結しているSANS Instituteとともに、サイバーセキュリティの実践スキルトレーニングに関する検討を進めます。
実践領域では、大学そのものを実践フィールドとし、研究で得られた最新データや研究成果を迅速に活用し、その結果を研究へ還元します。さらに、教育研究領域に求められるサイバーセキュリティ環境を追究し、ルール形成・普及活動を展開します。
SPIRALには、本学の教職員に加え、国立研究開発法人情報通信研究機構、国立研究開発法人産業技術総合研究所を含む4つの公的研究機関、15の民間企業、海外4大学を含む12の大学・教育組織で活躍する47名の客員教員・招聘教員を招き、計84名が参加します。これらのメンバーとともに、研究・教育・実践の活動を一体的に進め、成果を社会共創することにより、「進化の螺旋」を描き、日本のサイバーセキュリティ技術と人材を世界最高水準へと高め、安全で信頼できるデジタル社会の実現に貢献します。
SPIRALを支える実データ収集・分析基盤
横浜国立大学が収集・分析したIoTサイバー攻撃の観測データは50か国・280組織に提供され[注1]、サービス妨害攻撃のリアルタイムアラートは国内主要インターネットサービスプロバイダや世界のネットワークプロバイダに提供されています[注2]。これらの技術は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるセキュリティ監視にも貢献しました[注3]。
[注1]IoTサイバー攻撃観測データの提供実績(50か国・280組織)
[注2]サービス妨害攻撃リアルタイムアラートの提供実績
[注3]東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会におけるセキュリティ監視への貢献実績
SPIRALを構成する4つのラボ
サイバーセキュリティ研究実践ラボ :CyRaP Lab サイラップラボ
(Cybersecurity Research and Practice Lab)
センター内最大のラボとしてセキュリティ×AIの研究を牽引するとともに、セキュアな研究教育環境の構築、学内のセキュリティオペレーション支援(学生チームによるインシデント対応支援含む)、研究セキュリティガイドライン策定等、研究成果の創出と組織セキュリティ向上に資する活動を行います。国内外の大学・公的研究所・企業のトップ研究者・実務者、次世代を担う若手研究者を招き、世界最先端の成果を導出します。
次世代暗号ラボ :NexCrypt Lab ネクスクリプトラボ
(Next-Generation Cryptography Lab)
情報化社会の基盤をなす暗号技術について、耐量子計算機暗号を含む次世代暗号と、その応用に関する先端研究を牽引します。社会のデジタル化や計算環境の進展に伴う新たな脅威を見据え、将来の情報システムや社会インフラの安全性を支える暗号技術を創出し、実社会への応用を目指します。
先進実践教育ラボ :CyAPEX Lab サイエイペックスラボ
(Cybersecurity Advanced Practical Education and eXpertise Lab)
最先端の研究成果を活用した実践的な学習と、学内外の知見を融合した教育課程を通じて、高度な知識と実践力を備えたサイバーセキュリティ人材の育成を推進します。産学連携、サイバー演習、CTF(Capture The Flag)などを通じた人材育成に長年取り組んできた第一線のリーダーにも参画いただき、実践の現場で求められる知識・技術・判断力を身につけるための人材育成を追求します。
社会共創ラボ :CyLINK Lab サイリンクラボ
(Cybersecurity Linkage, Innovation, Networking and Knowledge-Sharing Lab)
国際標準化、知財化、事業化、パートナー連携、アウトリーチ・広報などを通じて、卓越した研究成果から生まれる国産のセキュリティインテリジェンスや技術を社会へ展開し、新たな価値の創出につなげます。産業界で活躍する第一線のリーダーにも参画いただき、大学発のセキュリティ技術を社会のニーズと結びつけ、その価値を最大限に社会へ還元するための仕組みづくりを追求します。
サイバーセキュリティ実践教育研究センター(センター長:吉岡 克成)
サイバーセキュリティは、経済活動や行政サービス、そして日々の暮らしを支える社会基盤にとって、最重要課題の一つとなっています。サイバー攻撃は、国家的な背景を持つものから人工知能を悪用した巧妙なものまで多様化し、その影響は一企業・一組織の枠を超えて社会全体に及んでいます。サイバー空間と、それに密接に関わるフィジカル空間の安全は、技術・人・社会が支え合って初めて実現するものであり、単一の技術や組織だけで立ち向かうことはできません。
横浜国立大学は、情報・物理セキュリティ分野において長年にわたり研究実績を積み重ね、産官学の連携のもと、多くの人材を社会に送り出してまいりました。本センターは、こうした蓄積を基盤として、学内に蓄積された知見と人材を一つの拠点に結集し、サイバーセキュリティという複合的な課題に分野横断で取り組むために設立されました。
本センターの活動は、四つのラボを中心に展開します。サイバーセキュリティ研究実践ラボ、次世代暗号ラボ、先進実践教育ラボ、社会共創ラボが、それぞれの専門性を深めながら相互に連携し、研究で得られた知を教育の現場へ、教育で育った人材を実践の場へ、そして実践から見えてきた課題を再び研究へと還元していきます。
この循環こそが、本センターの名に込めた「進化の螺旋(SPIRAL)」です。脅威が絶えず姿を変えていくこの領域に、完成された答えは存在しません。研究・教育・実践を絶えず循環させ、一歩ずつ新たな高みを目指していくことこそが、社会の安全を持続的に支える力になると私たちは考えています。
各界を牽引してこられたリーダーの皆様、現場の第一線でサイバー脅威に立ち向かう研究者・実務者の皆様、そしてこれからの我が国を担う新進気鋭の若手研究者の皆様がこの理念に賛同し、本センターに参画くださっています。こうした多様な知見と経験を持つ方々との連携を通じて、研究・教育・実践の新たな可能性を切り拓いてまいります。
私たちは、学内の研究者・学生はもとより、産業界、行政、そして地域の皆様とともに歩む「共創の場」でありたいと願っています。共同研究、技術相談、人材育成など、サイバーセキュリティに関するさまざまなご相談を、どうぞお気軽にお寄せください。皆様とともに、安全で信頼できる社会の実現に貢献してまいります。
センター概要
資料
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お問い合わせ先
<本件に関すること>
総合学術高等研究院
メールアドレス: ynugr-spiral-contact
ynu.ac.jp
(担当:リレーション推進課)

