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【プレスリリース】植物を用いた有用タンパク質生産のための研究開発拠点を設置しました

―世界初の“一気通貫型システム”で次世代製造の扉を開く―

概要

NEDOの「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」(以下、本事業)において、国立大学法人横浜国立大学は、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)、鹿島建設株式会社(鹿島)、デンカ株式会社、国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科(東京大学)、国立大学法人北海道大学と共同で、「遺伝子組換え植物を利用した大規模有用物質生産システムの実証開発」プロジェクト(以下、本プロジェクト)に取り組んでいます。このたび、本プロジェクトの成果を活用し、物質生産用に開発した植物を用いて、栽培から遺伝子発現、目的物質の抽出精製までを一気通貫型に実施可能な世界初の植物バイオものづくり研究開発拠点(以下、本拠点)を横浜国立大学内に設置しました。
本拠点では、宿主植物の育種、栽培、生成物の分離・精製などの研究開発のみならず、実証・製造への取り組み、技術情報の発信、人材育成までを包括的に連携させた運用体制により、国内における植物を用いた有用タンパク質生産などの新産業の創出を推進することで、次世代の植物バイオものづくりの中核拠点としての役割を果たします。

図1 植物バイオテクノロジーを用いたものづくりのイメージ
図1 植物バイオテクノロジーを用いたものづくりのイメージ

背景

植物バイオテクノロジーの分野では、遺伝子組み換え技術などを利用して、多様な有用タンパク質を生産することが可能です。しかし、現在、産業利用されている有用タンパク質のほとんどは微生物や動物細胞を用いて生産されています。温暖化の影響が懸念される近年、光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収し多様な有機物を生産できる植物の活用は、温室効果ガス(GHG)の削減や炭素循環型社会の実現のために欠かせない手段です。さらに、この植物を用いた有用タンパク質の生産では、人獣共通病原体や毒素の混入リスクが低いこと、生産の低コスト化や初期設備投資が低く抑えられることなど利点も多く、世界的にも医薬品原料などを製造する技術として研究開発が進められています。特に欧米では、わずか数日で多量のタンパク質が生産できる一過性発現系[用語1]を用いた方法が主流になりつつあり、数万平方メートル規模の事業用植物生産工場の開発、建設が進められてきました。一方、本プロジェクト[用語2]では、日本が有している優れた基盤技術を活用して同規模の生産能力を、より小規模な施設設備で実現可能な技術の開発に取り組んできました。

本拠点の概要

このような背景の下、NEDOは2020年度から本事業[用語3]にて、バイオものづくりを推進する研究開発および拠点整備に取り組んでいます。本事業では、2020年度から開始した、産総研(代表機関)、鹿島、デンカ、東京大学、北海道大学による本プロジェクトで、植物の一過性発現系を用いた高効率な実用化規模の有用物質生産に関する技術開発[用語4]に取り組んできました。本プロジェクトでは、図2に示した植物改変から栽培、抽出精製に至るまでの各プロセスで、事業として成り立つ生産規模として解決が必要な技術的な課題について研究開発を行い、最終的にこれらを融合・統合することで一気通貫型システムの開発を進めています。これは世界的にも初の試みであり、日本独自のプロセスを構築することで、国内で、植物を用いた有用タンパク質生産の新規産業創出につながることを目指しています。
その一環として、2024年度から横浜国立大学が産総研の再委託先となり、これまでの本プロジェクトの成果を集約した拠点を同大学内に設置することにしました。本拠点では、植物の栽培、目的物質生産遺伝子の導入、目的物質を生産している植物体の破砕から精密ろ過に至るまでの一貫抽出・精製システム[用語5]および不純物混入を抑え目的物質だけを高純度に抽出可能な抽出装置[用語6]を整備するとともに、関連する研究開発・生産実証に向けて取り組んでいます。併せて、技術の紹介だけでなく、座学や実習などを通じて産業人材育成にも活用します。

図2 本プロジェクトの概要
図2 本プロジェクトの概要

今後の予定

NEDOと産総研および各実施者は今後、本プロジェクトで開発した技術のさらなる高度化・高効率化に向けた研究開発を継続的に推進していきます。宿主植物の遺伝子改良による高発現系の構築、生育環境の最適化、抽出・精製技術の効率化など、生産プロセス全体の高度化を図り、実用規模での社会実装を目指します。併せて、本拠点では、植物バイオ技術の講習や実地研修、産業動向に関するセミナーなどを通じた教育・研修プログラムを実施し、将来を担う専門人材の育成に取り組みます。さらに、政策立案者、行政関係者、企業、アカデミアの研究者などに向けて、研究成果や社会的意義を広く発信することで、植物バイオ技術の社会的理解と導入促進を目指すとともに、産学連携の強化や新規プロジェクトの創出にも貢献します。
本拠点での活動を通じて、日本における植物を活用した高効率有用物質生産系の普及および新規産業の創出を支援し、医薬品原材料(抗体、ワクチン)、診断薬、試薬(アニマルフリー培地成分など)、機能性食品、化粧品、工業用酵素などの有用タンパク質生産分野などにおけるGHG排出量削減にも寄与します。

図3 横浜国立大学に設置された本拠点
図3 横浜国立大学に設置された本拠点
図4 本拠点での研究設備の一例
図4 本拠点での研究設備の一例

用語解説

[用語1]
一過性発現系:ゲノムに恒常的な変化を与えず、外来DNAを植物細胞に一過的に導入し、目的のタンパク質を短期間で効率的に生産する技術のことです。

[用語2]
本プロジェクト:参加機関:産総研(代表機関)、横浜国立大学(再委託先)、鹿島、デンカ、東京大学、北海道大学
https://www.jba.or.jp/b-production/technology/021.php

[用語3]
本事業:事業名:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
事業期間:2020年度~2026年度
事業概要:カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100170.html

[用語4]
植物の一過性発現系を用いた高効率な実用化規模の有用物質生産に関する技術開発:(参考)福澤徳穂「植物を用いた大規模有用物質生産のための一貫システムの開発」、バイオサイエンスとインダストリー(B&I)、83、262-264(2025)

[用語5]
一貫抽出システム:(参考)NEDO・鹿島ニュースリリース(2023年10月5日) 「遺伝子組換え植物で生産したタンパク質を高効率に一貫抽出できるシステムを開発」 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101695.html

[用語6]
高純度抽出装置:「目的タンパク質の回収方法及び製造方法」(特許第7644764号)として、デンカにより特許登録されています。

資料

研究者プロフィール

平塚 和之新しいウィンドウが開きます
大学院環境情報研究院 教授

お問い合わせ先

大学院環境情報研究院 教授 平塚 和之
メールアドレス: hiratsuka-kazuyuki-pz ynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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