【プレスリリース】汎用プレートリーダーで粒子径測定に成功
本研究のポイント
●汎用プレートリーダーで測定した紫外・可視スペクトルの形状から、液滴(粒子)のサイズを定量的に推定する手法を開発
●特殊な光学装置や蛍光標識を必要とせず、既存の汎用装置で実施可能な簡便・高スループットな解析法
●液–液相分離(LLPS)研究における粒子径評価の新たな標準手法となることが期待される
研究概要
横浜国立大学の草野麻由大学院生、児嶋長次郎教授、大阪大学蛋白質研究所の児玉高志特任研究員(常勤)らの研究グループは、京都大学の杤尾豪人教授らの研究グループと共同で、汎用プレートリーダーを用いた粒子径決定法の開発に世界で初めて成功しました。本手法は蛋白質やペプチドが形成する液滴(液-液相分離[用語1])の粒子径の解析に有効であり、幅広い分野において粒子径測定の新たな標準手法となることが期待されます。
本研究成果は、国際科学雑誌「Scientific Reports」(2025年12月27日付)に掲載されました。

社会的な背景
細胞内では、蛋白質や核酸が膜を持たない「液滴状構造」を形成し、さまざまな生命機能を担っていることが知られています。この現象は液–液相分離(Liquid–Liquid Phase Separation:LLPS)と呼ばれ、遺伝子発現制御、ストレス応答、神経変性疾患との関係など、生命科学分野で近年大きな注目を集めています。
LLPSによって形成される液滴の大きさや成長過程は、その機能や異常形成を理解するうえで重要な指標ですが、従来は顕微鏡観察や動的光散乱法(DLS)など、装置や測定条件に制約のある手法が主に用いられてきました。そのため、より簡便で、多検体を同時に評価でき、再現性の高い粒子径測定法の開発が強く求められていました。
研究成果
本研究では、汎用のマイクロプレートリーダー[用語2]を用いて取得した紫外・可視(UV–Vis)スペクトルの波長依存的な形状に着目し、液–液相分離によって形成される液滴の粒子径を定量的に推定する新手法を開発しました。
光散乱理論(ミー散乱理論)[用語3]に基づく解析と、粒径が既知のガラスビーズを参照標準として用いることで、スペクトル形状から液滴サイズを推定できることを示しました。本手法は、蛍光標識や特殊な光学系を必要とせず、市販のプレートリーダーのみで実施可能である点が大きな特徴です。
さらに、モデルペプチドが形成する液滴や、神経変性疾患との関連が知られるVAPB蛋白質の液滴形成過程に本手法を適用し、液滴の成長を長時間にわたりリアルタイムで追跡できることを実証しました。これにより、本手法が顕微鏡観察やDLSを補完する有効な解析手段となることが示されました。
今後の展開
本研究で開発した手法は、既存の汎用装置を活用できることから、LLPS研究に限らず、蛋白質凝集体やコロイド粒子など、幅広い分野への応用が期待されます。特に、多検体を同時に測定でき、長時間の追跡解析が可能である点は、基礎研究のみならず、創薬研究や材料科学分野におけるスクリーニング用途にも有用と考えられます。
今後は、装置特性や散乱条件の影響をさらに詳細に検討することで、粒子径推定の精度向上と応用範囲の拡大を目指します。
謝辞
本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(課題番号:JP22H05536、JP22K19184、JP23K27109、JP23K18030、JP25KJ0230)、日本学術振興会 次世代研究者挑戦的研究プログラム(課題番号:JPMJSP2178)、文部科学省 先端研究基盤共用促進事業「NMR共用プラットフォーム(大阪大学蛋白質研究所NMR装置群)」、日本医療研究開発機構AMED 生命科学・創薬研究支援基盤事業BINDS(課題番号 JP24ama121001)、および、大阪大学蛋白質研究所 共同利用・共同研究拠点(課題番号:CR-24-05)の支援を受けて行われました。
用語解説
[用語1]
液–液相分離(LLPS):蛋白質や核酸が溶液中で相分離し、液滴状の構造を形成する現象。細胞内の膜を持たないオルガネラ形成に関与する。
[用語2]
マイクロプレートリーダー:多数の試料を同時に光学測定できる汎用分析装置。
[用語3]
光散乱(ミー散乱):粒子サイズと光の波長に依存して生じる散乱現象。本研究では粒子径推定の理論的基盤として用いた。
論文情報
| 掲載誌 | Scientific Reports |
|---|---|
| タイトル | LLPS droplet size estimation via UV-Vis spectroscopy using a microplate reader |
| 著者 | Mayu Enomoto-Kusano, Takashi S. Kodama*, Suai Anzawa, Kyoko Furuita, Ryoga Kobayashi, Naotaka Sekiyama, Wataru Togawa, Toshimichi Fujiwara, Yohei Miyanoiri, Hidehito Tochio, and Chojiro Kojima* |
| DOI | 10.1038/s41598-025-33638-8 |
資料
研究者プロフィール
児嶋 長次郎![]()
大学院工学研究院 教授
お問い合わせ先
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大学院工学研究院 教授 児嶋長次郎
メールアドレス: kojima-chojiro-xk
ynu.ac.jp
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(担当:リレーション推進課)

