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【プレスリリース】有機反応の「適用範囲」を定量評価する新手法を開発

分子の反応性情報を用いて基質多様性を解析

発表のポイント

・ 有機反応の有用性を示す「基質適用範囲(substrate scope)」を定量的に評価する新しい指標を開発
・ 分子の立体・電子・軌道情報を表す「反応性記述子」を用いて基質多様性を解析
・ 従来の「基質数」では評価できなかった「基質適用範囲の広さ」を可視化

研究概要

 横浜国立大学大学院理工学府の一澤 要守 大学院生、西井 崇文 大学院生、五東 弘昭 准教授の研究グループは、有機反応の有用性を評価する新しい指標を開発しました。有機反応の適用範囲は通常「基質適用範囲」として示されますが、従来は基質数で評価されてきました。本研究では、分子の立体・電子・軌道情報を表す反応性記述子を用いて基質の多様性を解析し、反応の適用範囲を定量的に評価する手法を提案しました。さらに、本手法を予測性能、化学的妥当性、情報学的妥当性の三つの観点から検証し、その有効性を示しました。
本成果は国際科学誌「Journal of Chemical Information and Modeling」(2026年3月16日付)に掲載されました。

社会的な背景

 近年、人工知能(AI)や機械学習を活用したデータ駆動型研究が急速に進展しています。化学分野においても、反応予測や分子設計などにAIを活用する研究が活発化していますが、化学反応の理解や設計においては「どのような化学情報をAIに学習させるか」が重要な課題となっています。また、有機合成化学では新しい反応を開発する際に多数の基質を試すことが一般的ですが、報告される基質には研究者の選択バイアスが含まれることが多く、反応の適用範囲を客観的に評価することが難しいという問題があります。本研究は、この問題に対して「化学反応の基質多様性を定量的に評価する枠組み」を提示したものであり、データ駆動科学と化学を融合した新しい反応開発の指針となることが期待されます。

研究成果

 有機合成化学では、新しい反応を開発した際に、その反応がどの程度多くの化合物に適用できるかを示す「基質適用範囲(substrate scope)」が重視されています。従来、この基質適用範囲は「何種類の基質を試したか」という基質数によって評価されることが一般的でした。しかし、基質数が多い場合でも、類似した化合物ばかりでは実際の適用範囲を正しく示しているとは限らず、反応の有用性を客観的に比較することは困難でした。そこで本研究では、基質数ではなく「基質の多様性」に着目し、有機反応の基質適用範囲を定量的に評価する新しい指標を開発しました。本手法では、分子の反応性に関わる立体情報、電子情報、軌道エネルギーなどの量子化学的記述子を用いて化学空間を定義し、基質がどの程度広い領域に分布しているかを評価することで、反応の適用範囲を数値的に表すことが可能となります。 さらに、既存の分子類似性指標であるフィンガープリント(ECFP)と比較した結果、反応性に基づく分子記述子は、化学反応の特徴をより適切に表現できることが明らかになりました。情報理論に基づく解析では、本研究で用いた記述子が従来のECFPと比較して約3.7倍の情報量を持つことが示され、化学反応の基質特性を効率的に表現できることが確認されました。また、本研究で提案した評価指標を用いることで、「各反応条件における基質適用範囲の広がり」、「反応の適用範囲を拡張する特徴的な基質」、「反応が占める化学空間の分布」を可視化できることが示されました。本研究成果により、これまで定性的に議論されることが多かった基質適用範囲を定量的に評価・比較する枠組みが初めて体系的に示されました。これにより、有機反応の開発において、より合理的な基質選択や反応条件探索が可能となり、データ駆動型の有機合成研究の発展に貢献することが期待されます。

今後の展開

 本研究で開発した評価指標は、有機反応の基質適用範囲を定量的に比較・可視化できるため、 新しい反応条件の探索や、反応開発における基質選択の最適化、データ駆動型有機合成研究などに応用できると期待されています。また、本研究グループでは、この評価手法を広く利用できるようWebアプリケーションとして公開しており、研究者が自らの反応データを解析できる環境の整備を進めています。

論文情報

掲載誌 Journal of Chemical Information and Modeling
タイトル Substrate Scope in Organic Reactions: Comparison of Fingerprint-Based and Reactivity-Based Similarity Metrics
著者 Kaname Ichizawa, Takafumi Nishii, Hiroaki Gotoh
DOI 10.1021/acs.jcim.5c03167新しいウィンドウが開きます

資料

研究者プロフィール

五東 弘昭新しいウィンドウが開きます
大学院工学研究院 准教授

お問い合わせ先

<研究に関すること>
大学院工学研究院 准教授 五東 弘昭
メールアドレス: gotoh-hiroaki-yw ynu.ac.jp

<報道に関すること>
総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: press ynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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