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入学式&卒業式式辞

平成27年度卒業式・修了式 式辞

  桜の開花を迎えたここ横浜において、本日、卒業・修了される皆さんをお迎えし、平成27年度横浜国立大学卒業式・大学院修了式を挙行できますことは、本学にとって大きな慶びであります。ただ今、学部卒業生1,633名、大学院修了生849名及び専攻課程修了生31名の方々に学位記および修了証書をお渡し致しました。ご卒業・ご修了おめでとうございます。皆さんの入学以来の勉学の積み重ねが、本日の学位記の授与につながったものであり、皆さんのご努力に敬意を表します。そして、列席の理事・副学長・部局長をはじめ教職員一同を代表して、心からお祝い申し上げます。
 また、ご多忙の中をご出席賜りました校友会・同窓会及びご来賓の横浜市副市長の皆様に対しましても、厚く御礼申し上げます。そして、卒業生の皆さんを今まで見守り育てて頂いたご家族・保護者の皆様には、本日この日を心待ちにしておられたことと存じます。皆様の本学へのこれまでのご支援に心から感謝すると共に、お喜び申し上げます。
 学びの場として横浜国立大学を選ばれた皆さんは、緑深い常盤台キャンパスを舞台として、活力ある学生生活を過ごされ、先生方の温かい薫陶とともに、学友達の協力と励ましなど、青春のよき日の思い出を胸に抱いて巣立って行かれることと思います。
 さて、皆さんが大学または大学院に入学された時に抱いていた夢は、どのようなものだったでしょうか。或いは、小学校や中学校時代に持っていた希望はどの程度実現できたでしょうか。今日は、それを振り返ってみる良い機会でもあります。
 皆さんの多くは、21世紀を迎える直前の1990年代に生まれ、小学校、中学校時代の日本社会は、バブルが崩壊し、経済も低成長を迎え、少子高齢化の問題も顕在化し始めた時期でした。失業率も上昇し、ニート(NEET: Not in Employment, Education or Training。就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人のこと)が数十万人に達したことも話題になりました。また、最近では2008年のリーマンショック、欧州共同体EUにおける財政危機、世界各地におけるテロ事件の頻発、宗教的対立の激化、それに伴う難民問題などの経済的社会的背景もあり、漠然とした不安の中で、希望を持ちにくい時代状況であることは確かです。
 このような時代において、希望を持つことの重要性について、東京大学社会科学研究所が2005年から「希望学プロジェクト」をたちあげ、ニートの研究で有名となった弦田有史教授をリーダーとする調査研究が行なわれました。20歳から50歳代の約900名に対して、職業の希望に関するアンケート調査を行い、いくつかの興味深い結果が導き出されています。調査では、希望の有無と心理的・経済的・社会的要因との関係が分析されました。その結果、第一に、独立心が強い、好奇心が強いと答えるほど希望を持ちやすく、優柔不断である、いい加減だと答えるほど希望を持ちにくいということが明らかになりました。第二に、経済的な豊かさは余り関係がなく、小学校時代から家族から期待されていた、友人の数が多い、さらには挫折経験があった人ほど希望を持ちやすいということも明らかにされました。希望を持つことは大切であるといわれても、「実現しないものを求めてもしようがない」、「希望なんてもっても仕方ない」という反応も出てくるでしょう。しかし、調査から得られた第三の重要な結論は、希望を持った人のほうが生きがいのある仕事に出会う確率が高くなるということ、さらには挫折を経験して新しい希望に修正した人はさらに生きがいに出会いやすくなっているという事実も見いだされました。希望は実現することだけに意味があるのではなく、希望が創り出す修正や調整のプロセスにこそ意味があるのだと弦田教授は述べています。
 本日、卒業・修了された皆さん方が、4月からの新しい生活を始めるにあたり、改めて自らの夢や希望を洗い出し、その実現に向けた発展、修正のプロセスを深く考えてください。先に述べたように、希望を持つにあたり、家族からの期待や友達の多さという「他者との関与」が重要なポイントです。家族や友人だけでなく、今後は職場や学校などの社会的な場における他者との出会いを豊かにすることに心がけてください。
 そして、皆さんの持つ希望が、個人的な次元を出発点としながらも、会社や組織の将来に向けた希望、ひいては日本や世界のあるべき姿への希望という次元まで広がることを期待しています。

  留学生の皆さん、遠く祖国を離れ、異なる言語、文化、習慣の壁を克服し、横浜国立大学での学びを貫徹されました。これまでの皆さんのご努力に深く敬意を表します。これからは本学で身につけた知識や技術を母国の発展のために大いに役立てて下さい。そして、母国と日本との友好の架け橋となることを期待しています。

 皆さんが卒業される横浜国立大学は、全ての学部・大学院がひとつのキャンパスにまとまっています。その特長を活かすべく、在校生、卒業生、教職員が学部の壁を越えて一体となった校友会も一昨年スタートし、在学生の支援活動、学部横断的な在学生と卒業生をつなぐ活動を始めております。また、戦前の横浜師範、横浜高等工業、横浜高等商業の伝統を引き継いだ卒業生の組織として、教育人文系同窓会である友松会、社会科学系同窓会である富丘会、理工学部系同窓会である名教自然会も専門性を踏まえた在学生支援、卒業生同士の交流活動を活発に行っております。是非、これらの組織に積極的に参加されて、「他者との交流」を深めてください。大学としても卒業生との絆を大切にし、皆さんが今後、勉学や仕事上でのアドバイスを必要としているときには、引き続きお役に立てるように協力いたします。そして、毎年開かれる各同窓会の総会、校友会主催のホームカミングデー、海外同窓会開催の折は勿論のこと、横浜に来る機会があれば、大学やお世話になった先生を訪ねに来てください。皆さんを歓迎いたします。
 結びになりますが、本日配布された卒業メッセージ集で触れたサミュエル・ウルマンの詩の一節を紹介します。ウルマンは、1840年にドイツで生まれ、その後アメリカに移民し、南北戦争後、黒人への教育の機会均等に尽力された教育家です。彼の青春という詩の一節に、心にアンテナを張って、人間社会や自然界から美、勇気、希望、喜びを常に感じとることができる限り、人は青春であるというものです。
 “In the center of your heart and my heart there is a wireless station; so long as it receives messages of beauty, hope, cheer, courage and power from men and from the infinite, so long are you young.”  卒業後も、是非、世の出来事に対して好奇心というアンテナを張ってください。そして、希望をもって新しい旅立ちをされる皆さんが、心身ともに健やかで実り多き人生を歩まれ、母校となる横浜国立大学で学んだことをプライドとし、未来社会を切り開いていく推進役として成長されますことを心から祈念しまして、私の式辞といたします。

平成28年3月24日
国立大学法人 横浜国立大学長

長谷部勇一

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