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入学式&卒業式式辞

平成29年度卒業式・修了式 式辞

  桜の花も咲きそろいはじめた本日ここに、卒業・修了される皆さんをお迎えし、平成29年度横浜国立大学学位記・修了証書授与式を挙行できますことは、本学にとって大きな慶びであります。ただ今、学部卒業生1670名、大学院修了生849名及び専門職学位課程修了生25名の方々に学位記および修了証書をお渡ししました。皆さん、ご卒業・ご修了おめでとうございます。皆さん方の入学以来の勉学の積み重ねが、本日の学位記の授与につながったものであり、今までの努力に敬意を表します。列席の理事・副学長・監事・部局長・評議員をはじめ教職員一同を代表しまして、心からのお祝いを申し上げます。

  また、ご多忙の中をご出席賜りました横浜市、校友会、同窓会のご来賓各位に対しましても、厚く御礼申し上げます。そして何より、卒業生の皆さんを今まで見守り育てて頂いたご家族・保護者の皆様には、本日この日を心待ちにしておられたことと存じます。誠におめでとうございます。皆様の本学へのこれまでの多大なご支援に心から感謝申し上げます。

  そして、本日の卒業生の中には、178名の留学生が含まれています。留学生の皆さんにあっては、遠く祖国を離れ、異なる言語、文化、習慣の壁を克服し、横浜国立大学での学びを貫徹されました。これまでの皆さんのご努力に深く敬意を表します。これからは日本そして本学で身につけた知識や技術を母国の発展のために大いに役立てて下さい。さらには、母国と日本との友好の架け橋となることを期待しています。

  さて、皆さんの多くは、かつて大学受験または大学院受験に挑戦し、それを見事に突破して、本学の緑豊かなキャンパスで学びを今日まで続けてきました。本日は、皆さんにとって、明日から社会へ、或いは大学院へ羽ばたく節目にあたり、新たな挑戦にのぞむ日でもあります。そこで、皆さんの先輩に当たる、本学の二人の卒業生を紹介する中で、挑戦し続けるための条件について考えていただこうと思います。

  一人目は、本学工学部を昭和41(1966)年に卒業された藤嶋昭名誉博士です。藤嶋先生は、電気化学科で学ばれた後、東京大学大学院で学ばれ、修士1年生の時に、酸化チタンによる光触媒反応を発見され、その後50年に渡り、光触媒に関する基礎研究と応用研究に挑み続けました。藤嶋先生の発見した光触媒とは、水の中に導線で繋いだ酸化チタンの電極と白金の電極を入れ、強い光を当てるとそれぞれの電極から酸素と水素が発生し、水が分解されるというものです。これは、植物の葉緑素による光合成を人工的に再現したとして、有名な世界的科学誌ネイチャーにも掲載されました。その後、光触媒には、大腸菌などを殺す抗菌効果が高いことも明らかにし、快適な生活空間を作ることを目的として、光触媒の環境問題への適用研究を本格的に始めました。その後、産業界との密接な共同研究を進め、現在では、病院の手術室の床や壁に付着する菌の撲滅、セルフクリーニングする外壁塗装(本学の事務局建物に採用されています)、そして、たばこのにおいを取る空気清浄機(東海道新幹線の喫煙室に設置)、など多くの実用技術として製品化されています。このような長年にわたるご業績に対して藤嶋先生は、昨年秋に文化勲章を受章されました。

  2人目の卒業生は、本学も参加している東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科を本年3月に修了し、博士学位を取得された高野洋介さんです。高野さんは、中学3年生の時、水泳の事故による頸髄損傷で重い障害が残り、車いすでの生活になりましたが、多くの苦難を乗り越えて、横浜市立大学に入学しました。

  高野さんは、学部を卒業する際、自分には良くも悪くも「障害しかない」と考えるに至り、障がい者が学校教育の中で差別無く教育を受け、自立した学びを継続出来るようにしたい、という強い志をもち、横浜国立大学の教育学研究科特別支援教育専修、その後は連合大学院発達支援講座に進学しました。大学院では、肢体不自由のある生徒の普通高校における教育や支援体制に関する研究をテーマとし、自らの経験も活かした調査・研究を進めると同時に、地元横浜市中区の中学校と連携した実践的取り組みも行ってきました。高野さんは、キーボードによる文字入力が困難であるため、ゼミナールや一緒に講義受ける学生たちから、ノートをとる、質問紙調査の発送や整理、論文の図表の作成などの際には支援を受けましたが、逆に高野さんからは学術面で周りの学生への研究アドバイスを行うなど、相互の信頼と協力関係があったからこそ、研究を進め、博士論文をまとめ上げることができたということです。

  このお二人の卒業生は、何故、挑戦し続けることが出来たのでしょうか。そこには、三つの条件があるように思います。第一は、志です。藤嶋先生は、「人々の快適な生活に貢献したい」ということを、高野さんも「障害者が差別なく 自立した学びを継続させたい」という高い志を持っていました。第二は、志を実現するための確固とした専門性です。藤嶋先生には本学工学部で学んだ電気化学、高野さんには教育学研究科で学んだ発達支援学というしっかりとした専門的能力があったということです。そして第三は、協力と連携です。藤嶋先生は、光化学、環境科学など他の学問分野の研究者や産業界の人々との広範囲な協力・連携を大胆に進めてきました。高野さんも、地域の中学校との連携あるいは周りの学生たちとの親密な協力関係を構築していることで博士号を取得することができました。

  皆さんは、明日からの人生でいくつもの挑戦をしていくことになると思いますが、是非、世界や日本、そして地域のいろいろな課題に立ち向かう高い志を常に持ち、本学で学んだ専門的能力に自信をもち、それをさらに磨き続け、そして周りとの連携、協力を大事にしてください。

  連携、協力という点では、本学の同窓会、校友会を通じた卒業生の先輩の皆さんとの交流が大いに役立ちます。本学には、教育人文系同窓会である友松会、社会科学系同窓会である富丘会、理工系同窓会である名教自然会のほか、それらを横断した組織としてYNU校友会があり、現役学生の支援、卒業生同士の交流活動を活発に行っております。毎年開かれる各同窓会の総会、大学主催のホームカミングデーでもある横国Day、海外での同窓会開催などの折は積極的に参加してください。専門性や年齢、国境を超えた交流は皆さんの学びを継続する上で、知的刺激を受け、多様な人間関係を構築する良い機会となるでしょう。

  結びとして、皆さんの新たな挑戦に向けた船出に際して、アメリカの作家、マークトゥエインの言葉を送ります。人生においては、挑戦して失敗した後悔よりも、挑戦しないで後悔することが多いものだ、という主旨で次のメッセージを残しています。

  Twenty years from now you will be more disappointed by the things that you didn’t do than by the ones you did do, so throw off the bowlines, sail away from safe harbor, catch the trade winds in your sails. Explore, Dream, Discover. –Mark Twain

  これからも挑戦する心を失わずに、常に学び、豊かな人間関係を築き続けることを期待します。そして、本日未来に向けて船出をされる皆さんが、心身ともに健やかで実り多き人生を歩まれ、母校となる横浜国立大学で学んだことをプライドとし、21世紀社会を切り開いていく推進役として成長されますことを心から祈念しまして、私の式辞といたします。

平成30年3月23日
国立大学法人 横浜国立大学長

長谷部勇一

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