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【プレスリリース】障がい者の包摂実現への道筋を示す

障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性を解明する

発表のポイント

・横浜国立大学の二神枝保教授らの国際学術論文Work ability, inclusion, and human resource development of disabled peopleが人材開発で世界的に権威のある国際ジャーナルHuman Resource Development International に掲載された。
・本研究は、フィンランドの障がい者のデータ分析に基づいて、障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性を明らかにした。
・本研究成果は、職場におけるディスアビリティ・インクルージョン実現への道筋を示す。
・これからの日本の障がい者雇用や人材開発にとっても示唆に富む研究成果である。

研究概要

 横浜国立大学の二神枝保教授(第1著者)の国際学術論文Work ability, inclusion, and human resource development of disabled peopleが人的資源管理、特に人材開発で世界的に権威のある国際ジャーナルHuman Resource Development International (Q1: CiteScore Best, ハイインパクト: 4.4 (2024) 5 year IF)に掲載されました。本研究は、フィンランドの障がい者のデータを分析することによって、障がい者の仕事能力、インクルージョン[用語1]、人材開発の関係性を明らかにした実証研究です。本研究成果は、職場におけるディスアビリティ・インクルージョン[用語2]実現への道筋を示しています。

社会的な背景

 障がいのある人の就労・雇用の推進は、世界的趨勢である。世界保健機関(World Health Organization: WHO)によれば、障がいのある人の数は約13億人と推定され(WHO, 2023)、その約80%は生産年齢人口であるという(ILO, 2023)。しかし、障がいのある人びとがディーセント・ワーク[用語3]をする権利はしばしば否定されている(ILO, 2015)。ディーセント・ワークとは、働きがいのある人間らしい仕事である(Ghai, 2002)。
 国際労働機関(International Labour Organization: ILO)は、障がい者の就業能力[用語4]の向上とディスアビリティ・インクルージョン(障がい者の包摂)促進を提唱している(ILO, 2015, 2023)。ディスアビリティ・インクルージョンは、障がいのあるすべての人びとが教育、訓練、雇用、社会のあらゆる側面に参加することを促進し、確保し、そうした参加が十分できるために必要なサポートや便宜を提供するという考え方であり、障がいのある人もない人も共生し、包摂されるという理念である。本研究では、ディスアビリティ・インクルージョン実現の道筋となるべく、障がいのある人の仕事能力[用語5]、インクルージョンを向上させるための人材開発について探求することを目的としている。本研究では、世界的に障がい者の雇用比率の高いフィンランドのデータを分析することで、これからの日本の障がい者の雇用・人材開発の指針とするねらいもある。

研究成果

 本研究は、障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性に焦点をあてている。フィンランドの障がい者のデータを分析することによって、障がい者の仕事能力の決定要因と成果を探求している。本研究は、ディスアビリティ・インクルージョン実現に関して以下4つの点で貢献している。
 第1に、フィンランド国立労働衛生研究所の大規模データセット(N=6,214)を分析することで、障がい者と健常者の仕事能力の決定要因を比較した。その結果から、特にメンタリングやコーチング等の人材開発が障がい者の仕事能力を有意に決定することを明らかにし、インクルーシブ人的資源管理[用語6]の必要性を提言している。
 第2に、障がい者自身が認知するインクルージョンに焦点をあてた。障がい者自身が認知するインクルージョンが向上すれば、仕事能力が高まることがわかった。
 第3に、障がいに関する学際的アプローチ(医学、公衆・労働衛生、職業リハビリテーション、心理学、経営学、人材開発論等)によって、障がいのある人びとのエンパワーメントを目的とした包摂的な人材開発の枠組みの構築に貢献している。
 最後に、本研究は障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性(図1)を検証し、仕事能力の決定要因と成果を分析した。人材開発によって、障がい者の仕事能力が向上すれば、就業能力の向上につながることを明らかにし、職場におけるディスアビリティ・インクルージョン実現への道筋を示している。

図1. パス・モデル:障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性
図1. パス・モデル:障がい者の仕事能力、インクルージョン、人材開発の関係性

今後の展開

 本研究は、特に障がい者の人材開発の観点から非常にオリジナリティの高い研究である。つまり、人材開発に焦点をあて、それが障がい者の仕事能力に与える影響を分析し、労働市場における障がい者等の脆弱な人びとの価値を認めるインクルーシブ人的資源管理プログラムの設計に向けた知見を提示しているからである。
 また、人材開発が障がい者の仕事能力を向上させ、それが就業能力の向上につながるメカニズムを明らかにし、障がい者がディーセント・ワークを実現するための人材開発のインプリケーション(含意)を提示しているからである。
 そして、障がい者自身の認知するインクルージョンが仕事能力を向上させるので、障がい者自身が認知するインクルージョンに焦点をあてた人材開発の枠組みを構築し、障がい者のインクルージョンを高めるような人材開発の活用を提案しているからである。
 さらに、ICF(国際生活機能分類)に基づく学際的視点から障がい者の仕事能力とインクルージョンを検討することで、人材開発の枠組みを拡張・発展させ、教育者、政策立案者、人材開発の専門家にとって実践的に有用であることを示唆するからである。 
 したがって、本研究成果はこれからの日本の障がい者雇用や人材開発にとって示唆に富んでいる。今後、フィンランド国立労働衛生研究所が開発した質問票(能力指標: Abilitator: Kykyviisari)を用いて、日本の障がい者に対して調査を実施する予定である。障がいのある人びとは、障がいの程度や種類によっては、認知的観点からアンケートへの回答が困難とされている。しかし、フィンランド国立労働衛生研究所は、医師、理学療法士、心理学者、人間工学等の専門家からなる学際的なチームを編成し、障がいのある人びとの障がいの程度や種類に応じて質問の意味を理解できるよう、能力指標の3つのバージョン(一般版、簡易版、最も理解しやすい版)を開発した。すでにフィンランド国立労働衛生研究所の許可を得て、二神枝保教授らが日本語版能力指標を開発し、それは同研究所のHPで公開されている。( https://www.ttl.fi/sites/default/files/2023-08/Kykyviisari-japani.pdf)。日本語版能力指標を用いて、日本の障がい者の仕事能力、インクルージョン、就業能力の向上に有効な人材開発について研究し、インクルーシブ人的資源管理施策に貢献したい。

謝辞

 本研究は、日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)JP23K01603の助成を受けている。Q1、ハイインパクトファクター論文として横浜国立大学からオープンアクセス化の助成を受けた。

用語解説

[用語1]
インクルージョン (inclusion):包摂。人は自分が集団の重要な一部であると実感し、自分らしさが尊重されている時に包摂されていると認知する。ダイバーシティが多様性それ自体を強調しているのに対して、インクルージョンは人びとの多様性を認め、受容するのと同時に、人びとが共生し、包摂される存在だという基本的な考え方に重きをおく点において、より先進性がある。

[用語2]
ディスアビリティ・インクルージョン(disability inclusion):障がい者の包摂。障がいのあるすべての人びとが教育、訓練、雇用、社会のあらゆる側面に参加することを促進し、確保し、そうした参加が十分できるために必要なサポートや便宜を提供するという考え方であり、障がいのある人もない人も共生し、包摂されるという理念をさす。

[用語3]
ディーセント・ワーク(decent work):働きがいのある人間らしい仕事をさす。

[用語4]
就業能力 (employability):雇用されるために必要な準備、業務や行動を遂行できる能力をさす。

[用語5]
仕事能力 (work ability):現在および将来の仕事のニーズ、健康状態、精神的資源に対して個人が仕事を遂行できる能力をさす。

[用語6]
インクルーシブ人的資源管理 (inclusive human resource management):労働市場の周辺や外部にいる障がい者等の脆弱な人びとの価値も認める包摂的な人的資源管理をさす。

論文情報

掲載誌 Human Resource Development International
タイトル Work ability, inclusion, and human resource development of disabled people
著者 Shiho Futagami, Erja Kettunen, and Jacques Jaussaud
DOI 10.1080/13678868.2026.2622080新しいウィンドウが開きます

資料

研究者プロフィール

二神 枝保新しいウィンドウが開きます
大学院国際社会科学研究院 教授

お問い合わせ先

<研究に関すること>
大学院国際社会科学研究院 教授 二神 枝保
メールアドレス: futagami-shiho-hv ynu.ac.jp

<報道に関すること>
総務企画部 リレーション推進課
メールアドレス: press ynu.ac.jp

(担当:リレーション推進課)


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