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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

027

ヤギの飼育による環境保全と、
コミュニケーションの輪。

キャンパス内の里山部分を保全するために始まった、ヤギによる除草活動。飯田さんは、2021年度に参加したメンバーのひとりです。もともと里山に関心があったと語る飯田さんは、どんなことにチャレンジし、何を学んだのでしょうか。

飯田 朱音

都市科学部環境リスク共生学科

飯田 朱音

キャンパス内に
ヤギを放牧する意義

——ヤギによる除草実験の概要を教えてください

ヤギによる除草を行っている民間企業から、冬から春にかけて2頭のヤギをお借りしキャンパス内で飼育します。ヤギの餌となるのは、ササやアオキ、アシタバなど学内で自然に生えている植物です。私を含む学生メンバーの役割は、持ち回りでヤギのお世話をすること。水を替える、おやつをあげる、ヤギの観察用に備え付けられたカメラのバッテリーを交換する、体調を確認する。これらが基本的なルーティンです。メンバーたちと日程を調整しながら、最低でも1日1回は誰かが世話をするようにしています。

2021年度の実験は、11月初頭から3月下旬にかけて行われました。参加した学生は約20人。昨年度まではヤギをリードでつないで飼育していましたが、今回は放牧に初挑戦しました。キャンパスの一画には、木々の生い茂った「里山部分」と呼ばれるエリアがあります。そこを柵で囲い、ヤギに自由に草を食べてもらいました。

——ヤギによる除草実験に参加したいきさつは?

横国への入学が決まった頃に、大学のホームページで、ヤギによる除草の活動報告を目にしたのです。ヤギの除草活動は「里山」を保全するために行われると知って関心を持ちました。

里山とは、人の営みから影響を受けた森林や農村のこと。高校の頃に田畑が広がる農村に住んでいた僕は、大好きな農村環境を維持する仕事に就きたいと思っていました。大学で学びたかったことも、人と自然が共生する里山についてです。

その後、この実験を主導する小池文人教授の授業で、有志の飼育員を募集していたため、迷わず参加を決めました。

ヤギによる除草は
里山保全のモデルケースに

——除草実験を通じて、どんなことにチャレンジしましたか?

実験に参加していない友人たちから、ヤギの様子を尋ねられることがたびたびあったので小池先生に相談して、キャンパス内でヤギを散歩させることにしました。ヤギと歩いていると学生だけでなく、学内を散歩する近隣住民からも声をかけられます。目にした人はみんな最初こそ驚きますが、それが会話のきっかけになることも。この散歩を通じて温かなコミュニケーションの輪が広がったことは、嬉しい発見でした。ちなみにヤギの力は想像していた以上。僕らが引っ張られることもしばしばでした(笑)。

——除草実験を通じてどんな成果が得られましたか?

以前に比べると、植物がうっそうと茂っていた放牧エリアは見違えるほど視界が開けました。里山は、人間が管理しなくなると、繁殖力の強い植物の占有によって生態系の多様性が損なわれます。ヤギによる除草の事例は、里山保全のモデルケースになるのではないかと期待しています。

学生や地域住民の方々に、里山の抱える課題を知ってもらうきっかけにもなりました。放牧エリアの入り口に、植物の多様性が失われつつある里山の現状とヤギによる除草の目的を説いた紙を貼り出しているのですが、通りかかった大勢の人が立ち止まって読んでくださっています。

ほかにも、農業をテーマとした地域課題実習でともに活動するメンバーが、放牧エリアに足を運んでくれたり、散歩に同行してくれたりもしました。人と人とのつながりが広がったことも、除草実験から得られた嬉しい成果です。

地域活性化につながる
ヤギを接点としたコミュニケーション

——今回の実験で得た気づきを、これからどう活かしていきたいですか?

今回の実験を通じて、ヤギがコミュニケーションのきっかけになることが分かりました。次回はヤギを接点とした交流に、もっと力を入れていきたいと思います。自然環境の保護だけでなく、地域の活性化にも役立てられると思うのです。たとえば、学生や近隣住民がヤギと触れ合える場を設ける構想もそのひとつ。人懐っこいヤギに癒やされながら、除草実験の活動についても広く知ってもらえたら嬉しいですね。

——今後の目標について教えてください

授業で里山について勉強するだけでなく、実際に各地の里山にも足を運びたいと思っています。卒業後は、地方で里山再生に携わる仕事に就きたいです。現代に合った里山の利用方法を提案するのも面白そうですね。たとえば、都市計画をする際に、里山を再現したエリアを設けるとか。ほかにも今回行ったヤギの除草実験と同じように、人々の交流のきっかけづくりとなるような里山の利用方法を模索していきたいと思っています。

掲載:2022年3月

MY MEMORY

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1.除草作業にきてくれたしろ(手前)とまる(奥)2.北門放牧地にて除草中のヤギ3.ヤギが好んで食べたため葉がなくなったヤツデ4.お散歩中に理工食堂を覗くヤギたち

ヤギによる除草で環境にやさしく

都市科学部の飯田さんが参加するヤギによる除草実験。小池文人教授が主導するこの実験で、2021年度は有志の学生とともに2頭のヤギ「まる」と「しろ」を横国のキャンパスで飼育した。

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