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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

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学校の問題は答えが出ないものばかり。
対話しながら前向きに考え続けたい。

2015 年の公開から9 年が経っても、各地で上映され、人々の心をつかみ続ける記録映画「みんなの学校」の魅力やその全国大会の実行委員会の経験を田島さんに伺いました。

田島 愛里

教育学部 教育学専門領域

田島 愛里

「彼らと同じ教室で過ごせていたら」小学校からの分離教育に疑問

——小学校での分離教育についてどのように考えていますか?

田島: 幼稚園では、障がいの有無で子どもたちが分離されることはありませんでしたが、小学校では通常学級と特別支援学級があり、特別支援学級の子どもたちとは「交流」という形で関わるようになりました。幼稚園に通っていた頃は彼らのことも純粋に「友達」と思っていたのに、小学校では普段から同じ教室で過ごしていなかったからか、クラスメイトと同じように、「友達」と捉えていない自分に気付きました。「関わりがなければ相手を知ることは難しく、その無知が偏見を生むのではないか。」、「もし彼らと同じ教室で過ごしていれば捉え方は違ったかもしれない。」と感じ、分離教育が偏見を助長する一因なのではないかと考えるようになりました。

——「みんなの学校」は田島さんにどのような影響を与えましたか?

田島: 舞台となっている大阪市立大空小学校では、障がいがある子どももない子どもも同じ教室で共に学び合っていました。これこそが本来の学校のあるべき姿であり、このような取り組みが共生社会に繋がっていくのだと感じました。「みんなの学校」を知るまでは幼稚園教員になろうと考えていましたが、小学校教員を目指すことに決めました。

映画イベントの実行委員になり台風にも負けず初の関東開催へ

——「みんなの学校」の全国大会の実行委員会の一員となった経緯を教えてください。

田島:「みんなの学校」の全国大会の実行委員会は、毎年有志が集まって担当しています。全国大会に1年目は一般参加者として、2年目はボランティアとして参加しました。3年目には実行委員会の一員として、大学の仲間と共に主催者となり、関東初となる全国大会開催を実現しました。

——2024年の「みんなの学校」全国大会を実行委員会の一員として開催するにあたって、どのような苦労がありましたか。

田島:2024年の「みんなの学校」全国大会は、台風接近による悪天候で交通機関に影響が出るという困難に直面しました。さらに、大空小初代校長の木村泰子さんも来場できず、予定していたゲストトークは急遽オンラインで行われました。それでも、約140人の参加者が会場に集まり、とくに中高生の参加者が多かったことに嬉しい手応えを感じました。また、ワークショップでは「みんなの学校ってなんだろう?」や「学校のみらいを考える」というテーマで参加者同士が対話を通して考えを深められる場を提供することで、参加者それぞれが対話の時間を大切にし、問題を前向きに考える場とすることができました。

子どもたちの困りごとに向き合い、よりよい環境を作る教員を目指す

——グループでの話し合いでどのような気付きを得ましたか?

田島:グループでの話し合いを通じて、参加者からあがった「余白」「余裕」「ゆるゆる」といったキーワードが、実は同じ意味合いであることに気付きました。これらの言葉は表現が異なるものの、全て「もっと自由で余裕を持った空間や時間」の重要性を示しています。複数のキーワードが繋がっていったことで、自分自身がより深く納得できました。本大会では、各グループで生まれた考えや意見を参加者全員で共有する時間を設けました。それにより、より豊かな対話が生まれたと感じています。多くの参加者にも同じように感じていただけたのではないかと思います。

——分離教育を改革するためには教員ではなく制度を考える文部科学省などの省庁で働くといったことは考えなかったんですか?

田島:分離教育などの教育制度を変えるために、教育委員会や文部科学省に進んではどうかと勧められたことがありますが、あくまで現場で働き続けることを選びたいと考えています。学校にいるからこそ見える子どもたちの困りごとに真摯に向き合い、より良い教育環境を作り上げることができるのは、教員自身だと信じています。学校という場で子どもたちを最も近くで支えることができる教員として、教育の変革を実現したいです。

掲載:2025年3月

MY MEMORY

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1.本学の教育文化ホールで開催された第7回「みんなの学校全国大会」の様子。2.全国から集まった実行委員と、横国生で構成された学生実行委員のメンバーたち。3.映画を初鑑賞した際のチケット。現在も大切に保管している。4.一般参加の2022年、当日ボランティアとして携わった2023年、実行委員を務めた2024年の大会チラシ。

「学校のみらい」を考える自主上映と対話の集会

映画「みんなの学校」に感銘を受けた有志が実行委員を務め、自主上映と対話を行うイベント。多様な子どもたちが同じ教室で学ぶ教育の意義や、学校教育のこれからを、対話を通して考えていく。

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