挑戦する横国の学生たち
夏と秋の定例茶会のほか、春の清陵祭でも茶会を催している横浜国立大学茶道研究会。会長の岩室さんは中学からの経験者ですが、大学でもさらに茶道を究めたいと語ってくれました。
教育学部学校教育課程
中学入学後、茶道部に体験入部した際、先輩方の所作が美しくて感銘を受けたからです。背筋がピンと伸び、手先もピシッと揃っている。和室のたたずまいも素敵。菓子もおいしい(笑)。正式入部後は、中高一貫校だったので、6年間みっちり稽古に励みました。お招きしていた外部の先生に、横国に合格したことを伝えると、お知り合いが横国の茶道研究会で指導されているとのこと。これも縁だったのでしょう。自然な流れで大学でも茶道を続けることになりました。
中高では、畳に正座する通常の方式や、椅子やテーブルを使う立礼式で取り組んでいました。野外や旅先で楽しむために携帯用の茶道具一式を詰め込んだ「茶箱」による作法を経験したのは茶道研究会に入ってからです。浴衣や着物で稽古や茶会に臨めるのも新鮮でした。和装だと足さばきにも留意しなければなりません。道具の選択や茶会のテーマ設定は学生自ら行います。お客様をどのようにもてなすのか、自分たちで考える機会が増えました。
夏と秋に1回ずつ、横浜の三溪園や川崎大師など外部の施設をお借りして定例茶会を実施しています。季節を存分に感じながらお茶を楽しめるのが醍醐味です。OB・OGから他大学の学生、一般の方までたくさんいらっしゃるので、おもてなしにも力が入りました。卒業生をお招きする大学のホームカミングデーでもお茶をお出ししています。このときはスーツで対応しますが、和装とはまた違った趣があります。2019年は立礼式で行ったため、年配の方にも足の負担がなく、ゆったりと味わっていただけたのではないでしょうか。
部員が一連の動作を披露した上で、実際にお茶を点ててもらう体験企画です。言葉が通じないこともあるので、こちらはジェスチャーで伝えて、留学生も見よう見まねですが、お互いリラックスして楽しいひと時でした。新鮮だったのは彼らの関心の方向です。「お辞儀ってどうするんですか?」と聞かれてハッとしました。日本人からはあまり出ない類いの質問です。お辞儀ひとつとっても、外国の方には未知の世界。自分たちの所作を見直す機会になりました。
茶道の性質上、ほとんど活動することができませんでした。道具が揃わないと稽古は難しいため、自宅でやれることもほとんどありません。それまで茶道は日常生活の一部であり、習慣でした。それが途絶えてしまったことで「やっぱり茶道が好きだったんだ」と自分の気持ちを再認識する契機になったのです。特に、亭主としてお客様にふるまって、褒めていただいたときの喜びはほかに代えられません。精進しようという向上心も生まれます。茶道は私にとって、なくてはならないものだと実感した1年でした。
点てる動作をさらに洗練させたいです。泡のきめ細かさはどうすれば出せるか。お湯と粉の量のバランスはどうか。1年間の空白があったからこそ、もっと成長しなければと思うようになりました。部の会長としては、これまで先輩方が築き上げてきた伝統を守りながら、コロナ禍の中で自分たちのスタイルをどのように加えていくか模索しています。部員間のコミュニケーションを密にして、みんなで協力しながら、さらなる高みを目指していきたいですね。
掲載:2021年3月1.清陵祭2.普段の稽古3.夏の定例茶会4.ホームカミングデー
理想は高く、敷居は低く
横国の茶道研究会で採用している流派は裏千家。茶会のほかにもさまざまな企画で茶道の魅力発信に取り組む。