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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

019

伝統工芸品の魅力を世界へ。
日本とパラグアイの架け橋を目指す。

「南米のおへそ」と呼ばれるパラグアイ。ホームステイや現地調査を経て、レース刺繍の伝統工芸品「ニャンドゥティ」のネットショップ開設に携わった張さんに、パラグアイへの思いを伺いました。

張 莉佳

都市科学部都市社会共生学科

張 莉佳

好奇心に火が付いた
初めての渡航

——パラグアイ、ニャンドゥティとの出会いについてお聞かせください

高校の頃、国境なき医師団のことを知って国際協力に興味を持ち、今の学科に進学しました。1年次には、パラグアイの地域研究を専門とする藤掛教授の授業のおかげで、この国への関心が徐々に高まっていきます。藤掛教授は、現地の子どもたちの支援を行うNPO法人「ミタイ・ミタクニャイ子ども基金」(以下「ミタイ基金」)に関わっていらっしゃったことから、私もボランティアとしてお手伝いすることになりました。イベントでニャンドゥティの販売を行っていたことが、この伝統工芸品との最初の接点です。

——実際にパラグアイに行かれたのはいつ頃ですか?

1年次の終わり頃です。藤掛教授に勧められた外務省のプログラムによって、初めてパラグアイの地を踏みます。わずか1週間でしたが、好奇心が刺激され、もっとこの国のことを知りたくなりました。さっそく夏には大学のプログラムで再訪を果たします。3週間、都会のど真ん中から農村までいろいろなところでホームステイした後、そのままミタイ基金の海外インターン生として6ヵ月間留まり、ニャンドゥティを含むいくつかのテーマで調査研究を行いました。こうしてようやく現地の生活や文化を肌で知ることができたのです。

同じ商品はひとつとしてない、
手作りの味わい

——ニャンドゥティの制作現場はいかがでしたか?

担い手は主に家庭の女性たちです。別の仕事と掛け持ちして、家事の合間に取り組んでいます。丹精に手作りするため、ちょっとしたものでもそれなりの時間がかかっていることがわかりました。一方で面白かったのは、直径10センチの丸形コースターというオーダーに対して、空き瓶や類似のコースターの縁を鉛筆でぐるっとなぞってサイズを取っていたこと。ラテンの気質というか、おおらかなんですね。同じ規格のものを大量生産はできないけれど、手作りの温かみを実感できました。

——ニャンドゥティのネットショップを開設するに至った経緯をお聞かせください

ニャンドゥティが取引される現場を知って少しショックを受けました。仲介業者が安価で買い叩き、観光客向けのショッピングモールに高値で転売することもあったのです。現地では伝統手芸品としての価値が十分に認められていません。フェアトレード(商品を生産する途上国が不当な扱いを受けない公正な貿易)を目的にミタイ基金が取り組んでいたニャンドゥティの販売でなにか強化できることはないかを考え、帰国後の2020年、ミタイ基金の学生部の有志でネットショップ「SMICS」を立ち上げました。サイトからの注文状況に応じて、価格や生産数を作り手と丁寧に調整するほか、余剰利益を現地へ還元するなど、フェアトレードの実践に努めています。

地球の反対側に
もうひとつの家族ができた

——パラグアイでは障がい者支援の調査も行ったと伺いました

大学入学後、手話サークルにも参加し、ろう学校でボランティア活動を行っていました。障がい者支援に関心があり、パラグアイの状況も気になったのです。障がい者を対象とした法律の整備は他国が参考にするほど進んでいたのですが、世間にあまり浸透していないのが課題でした。バスが車椅子で待っているお客さんを素通りすることもあるそうです。そもそも舗装されていない道が多く、車椅子で出かけること自体が容易ではありません。都会と地方との格差も大きく、地方では支援を受けにくい。公立の無料リハビリ施設は、高額な私立の施設に通えない人たちで満杯です。さまざまな問題が絡み合っている現状を知ることができました。

——今後もパラグアイに関係する活動は続ける予定ですか?

スペイン語を本格的に身に付けて、パラグアイに関する知識や経験をベースに、SDGsの達成に貢献できる仕事に携わってみたいですね。パラグアイとはもう切っても切れない関係です。「日本と比べて貧しい」という先入観は完全になくなりました。なんといっても心が豊かなんです。ホストファミリーの皆さんは「来てくれてうれしい。あなたは私たちの娘。家族の一員だよ」と言ってくれる。日本からは地球の反対側、飛行機で丸2日ほどかかる遠い国ですが、「お互いの心はすぐそばにあるんだよ」と言われたときに、なんて温かいんだろうって。パラグアイは第二の故郷ですね。

掲載:2021年3月

MY MEMORY

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1.ニャンドゥティの商品写真2.ニャンドゥティの制作風景 (現地作り手さん)3.ホストファミリーとの写真 (ホストマザーとファザー)4.基金の学生部のメンバーの集合写真 (SMICSメンバー4人)

四半世紀に及ぶパラグアイ支援の道のり

95年に活動を開始した特定非営利活動法人ミタイ・ミタクニャイ子ども基金。パラグアイの農村や都市スラムの問題に向き合い、子どもたちたけでなく女性への支援も行っている。
ミタイ・ミタクニャイ子ども基金

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