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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

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子どもたちに好奇心の種をまき、
科学の楽しさを伝えたい。

各地の学校をまわって出張授業や理科実験ショーを行う「CurioSeeds」。現役の博士学生が、なぜ今、子どもたちへのアウトリーチを始めたのか。その背景や活動の手応えをCurioSeeds代表の飯島瑞稀さん、メンバーの杉本結花さんに伺いました。

杉本 結花・飯島 瑞稀

理工学府 化学・生命系理工学専攻

杉本 結花・飯島 瑞稀

小・中・高校生を主な対象に
科学への興味が湧き出す授業を

——「CurioSeeds」を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか。

飯島:この団体を立ち上げたきっかけは、家庭教師先の生徒との会話でした。夏休みなのに友達とも遊ばず、ほとんど家にいる子どもが多いと聞き、以前より遊びの機会が減っていることに驚きました。同時に子どもたちの学力低下や理科離れといった問題も知り、自分にできることは何かないかと考えました。専門分野を活かし、遊びを通じて科学の楽しさを伝えることができるかもしれない。そんな想いで仲間を募り、2019年にCurioSeedsを発足させました。

——活動内容について詳しく教えてください。

杉本:これまで、五感を使うフィールドワークや仮説検証など科学的な思考プロセスが学べるワークショップ、理科実験ショーなどを、授業や特別イベントの一貫として開催してきました。高校生や大学生の進路相談・キャリア教育にも力を入れています。進路選びでは安定の確約=正解を求める傾向を感じるので、現役の博士学生の体験談を語り、間違った道などないので自分の興味があることを軸に考えよう、と伝えています。その道が理系進学へとつながっていればうれしいです。

育てたいのは「考える力」
ワクワクを学びの原動力に

——活動に参加した子どもたちの反応はどうですか?

飯島:小学一年生と取り組んだ「葉っぱ図鑑づくり」のフィールドワークでは、子どもたちが好きな葉っぱを拾い、植物を専門とする博士学生と一緒に分類して葉の形の違いや生息場所について考え、最後はクラスで一つの図鑑にまとめることで、自然の奥深さを学びましたが、先生からは「普段落ち着きがない子も興味を持って取り組んでおり、この授業をしてよかった」という声をいただきました。また、液体の色が変わるなど、身近な疑問やテーマを扱った理科実験ショーも好評です。不登校の子どもたちが通うフリースクールでは「物静かだった子が、自分から挙手をしていて感動した」と感謝され、日本語学校では「言葉の壁を越え、全員が前のめりで楽しんでいた」と驚かれました。CurioSeedsのパーパス(存在意義)は「好奇心の種をまく」ことです。子どもたちに、世の中には面白いものがたくさんあるのだと知ってほしくて。特に小学生には、ワクワクするような科学の不思議や感動を味わってもらうことを大切にしています。

杉本:活動に参加する博士学生たちは、決して子どもたちを答えに誘導しないようにしています。正解のある勉強とは違い、物事を疑う力や自分で答えを考える力を育みたいので。変化し続ける情報化社会では、自分の頭で柔軟に考え抜く力が必要ですからね。博士学生たちも一緒に考えるスタンスで臨んでいます。

博士と社会をつなぎ、
未来の博士を増やす活動に

——CurioSeedsの活動を通じて得られたものはありますか。

杉本:CurioSeedsの活動は、私自身にとっても大きな価値を持っています。博士課程まで進むと、周りには女性はおろか同期も先輩もほぼおらず、孤独で生きづらい感じがありました。CurioSeedsでは、社会や仲間との繋がりができるので、視野が広がり、悩みを解消しやすくなりました。

——博士学生の皆さんの研究生活を支える役割も果たしているんですね。最後に今後について展望を聞かせてください。

飯島:できるだけ参加費は無料にし、お金の有無に関わらず、教育機会を平等に設けたいと考えています。この一年間は大学のベンチャー支援制度に採択され、資金を含め多くのサポートを受けてきましたが、活動継続のためにクラウドファンディングの募集を始めました。集めた資金は協力者への謝礼としても活用するつもりです。研究を伝える活動に価値があることを示して博士と社会との接点を増やしてもらえたらと思っています。

杉本:活動に参加する博士が増えることで、博士が身近な存在になり、憧れの職業になるくらいイメージを上げたいですね。

飯島:科学の楽しさを知った子ども達が研究の道に進み、博士学生になっても安心して研究できるように、CurioSeedsの活動が未来の日本の研究開発力の向上にも貢献できればいいなと思います。

掲載:2024年3月

MY MEMORY

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1.新たな企画の第一歩は話し合いから。メンバーたちがアイデアを持ち寄る。2.授業の準備は念入りに。予行練習を重ねる。3.「葉っぱ図鑑づくり」のフィールドワークでは、さまざまな形の葉っぱを見つけて楽しんだ。4.夏のリコチャレ2023『博士と一緒に!夏休みの自由研究プロジェクト』にて。オリジナルの香水を作った。

小・中・高校で出張授業を開催する「CurioSeeds」

理工系の博士女子学生6名がコアメンバーとして在籍するサイエンスコミュニティ。名前の由来は好奇心(Curiosity)+種(Seeds)から。各種学校・団体のほか、オンラインでも活動を展開している。

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