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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

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未来のモビリティをこの手で。
超音速旅客機の設計者をめざします。

理工学部に在籍する篠塚さんの夢は、音速以上の速度で飛行し、人や物を輸送する超音速旅客機の設計者です。超音速旅客機をつくることで、実現したい未来とは。壮大な夢を緻密に組み上げる、設計者の卵にお話を伺いました。

篠塚 温志

理工学部機械・材料・海洋系学科海洋空間のシステムデザインEP

篠塚 温志

横国なら航空宇宙工学を基礎から応用まで
しっかり学べます

——なぜ超音速旅客機の設計を志すようになったのでしょう?

まずはシンプルに幼い頃から飛行機が大好きだったからです。なかでも超音速旅客機に関心を持つようになったのは、中学生の頃。初めに惹かれたのは、従来のジェット旅客機の2〜4倍というその速さです。フォルムにも魅力を感じました。ただ美しいだけではなく、音速を超える速度を出すためにあるべくしてその形をしている。いわゆる「機能美」に魅せられたのです。しかし、超音速旅客機は経済性などの確保が難しく、現在は商業飛行を行なっている機体は一機もありません。ならば自分の手で商業飛行を可能にしてみたい。そう考えて設計者を志すようになりました。

——大学も「超音速旅客機の設計者になる」という観点で選んだのでしょうか?

航空宇宙学をしっかり学べる研究室があるかどうか、という基準で大学を選んでいきました。最終的に、現在所属している「理工学部 機械・材料・海洋系学科 海洋空間のシステムデザインEP(EP=教育プログラム、以下EP)」を選んだのは、航空機の設計に欠かせない「空気力学」「機体の誘導制御」をバランスよく学べると感じたからです。実際に超音速旅客機の翼に関する研究をされている先生がいらっしゃることにも惹かれました。基礎に止まらず、航空機への応用までを学ぶには、日本でも屈指の環境だと思います。

いつかは航空産業の本場、
アメリカで働きたい

——入学後はどのようなことを学んできましたか?

理工学の基礎である数学や物理をじっくり学んだ上で、「航空機設計概論」「航空機空力性能論」など、航空宇宙分野のさまざまな講義を受講してきました。今もちょうど「航空機制御論」の課題に取り組んでいたところです。与えられた条件下で飛行機の姿勢を制御するためには、どれくらいの速さでどれくらいの大きさで舵を取ればいいのかを論じるレポートなのですが、複雑に絡み合うさまざまな要素を考慮しながらひとつの回答を導かなければならず、本当に難しい。これまで学んできた数学や物理学、航空宇宙学の知識を総動員して立ち向かっています。

——アメリカへの短期留学も経験したとお聞きしました。

大学2年次の夏休みに、YNU海外短期英語研修プログラムを利用してサンディエゴ州立大学へと留学しました。将来、設計者として第一線で活躍するために、航空産業の盛んなアメリカでの就職も視野に入れています。留学はその第一歩。一ヶ月半と短期間でしたが、現地の学生やホストファミリーと毎日会話をすることで、英語でもコミュニケーションを取れるという自信がつきました。たまたま仕事でサンディエゴに訪れていた、EPの卒業生に出くわすという嬉しいハプニングも。航空機の教官の資格を持つその先輩の計らいで、小型飛行機の操縦を初体験したことは、アメリカでの忘れられない思い出です。

超音速を超えた「極超音速旅客機」が
研究テーマ

——2年次からは「ROUTEプロジェクト※」にも参加していますね。

はい。空気力学研究室に所属し超音速旅客機よりさらに速い極超音速旅客機の空力特性を研究しています。音速以上の速度で飛行する航空機の弱点のひとつが、低速での姿勢制御。極超音速旅客機では離着陸のような低速での飛行時に、機体が安定しません。これが極超音速旅客機の商業化を妨げる要因のひとつになっています。こうした課題を解決するために僕が研究しているのが、離着陸時の機体の姿勢を安定させる特殊な形状の翼です。機体の3Dモデルをつくってコンピューター上で圧力の分布をシミュレーションしてきました。

※ROUTEプロジェクト:理工学部の1〜3年生を対象としたプロジェクト。通常、研究室への配属が決まるのは4年次だが、ROUTEプロジェクトの参加者はそれよりも早く研究室に所属し、本格的な研究をスタートできる。ROUTEはResearch Opportunities for UndergraduaTEsの略。

——研究の進捗はいかがですか?

まだまだ、試行錯誤を繰り返す日々ですね。先日もようやく、納得のいくデータがひとつ取れたところです。「ROUTEプロジェクト」での活動はもうすぐ一区切りですが、これからも引き続き超音速旅客機の研究を続けていくつもりです。将来は必ず超音速旅客機の設計者になって、商業化を実現したい。東京からロザンゼルスをたった3時間で飛ぶことのできる超音速旅客機が身近なものになれば、人々の生活は大きく変わります。世界に大きなインパクトをもたらす未来のモビリティを、この手で設計したいですね。

掲載:2020年10月

MY MEMORY

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1.EPでの授業風景。写真は船の模型を友人と検討しているところ。2.アメリカ留学で、語学クラスのクラスメイトと記念撮影。3.JAXAが一般向けに公開した極超音速旅客機のコンセプトモデル。4.3Dモデルのシミュレーションの様子。空気の流れが可視化されている。

先進性と実践性を兼ね備えた学びの場

船舶海洋工学や航空宇宙工学をはじめ、海、空、宇宙を舞台にした最先端の学びを得られる海洋空間のシステムデザインEP。専門性が高い分、入学当初から明確な目標を掲げている学生が多く、日々切磋琢磨しながら勉学に励んでいる。

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