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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

021

畑を耕し、地域をひとつに。
Agridge Projectが見つめる農業の明日。

2017年度から地域課題実習としてスタートしたAgridge Project。「農業による地域活性化」の理念の下、学生ならではの視点でさまざまな企画に取り組んでいます。話を伺った共同代表のおふたりからは、“地域愛”、“農業愛”があふれていました。

酒井 郁人 清水 翼

経済学部経済学科

酒井 郁人 清水 翼

「大学生が作る野菜」に
大きな価値がある

——実際に野菜を栽培し、販売されているんですね

清水: 2019年度は、キャンパス近くの農家さんから畑の一部を使わせていただき、年間通して20種類の野菜を栽培しました。実際の作業は、自治会長さんをはじめ地域の方々にご協力いただきます。販売の時期を見越して植え付けから収穫までのスケジュールを管理するのが思いのほか難しかったですね。お手伝いいただけるようお声がけしても都合がつかず想定した人数が集まらないときは苦慮しました。一方で、お子さま連れでご参加いただき、幅広い世代が集うことも。畑はまさに地域交流の場でした。

——販売の状況はいかがでしたか?

清水:キャンパス内に1ヵ所、定期直売所を設け、大学西門から徒歩1分の市の施設(コミュニティハウス)でも不定期で出張販売を行いました。口コミで知られるようになり、地域の常連さんとは顔なじみです。「今日○○はないの?」「今度は△△持ってきてよ」といった話から、顧客ニーズに触れる機会にもなっています。

酒井:ただ野菜を買うことが目的で直売所に来られるとは限りません。それならスーパーでもいいのですから。「近所の大学生が作った野菜を買う」という体験に価値を見出していらっしゃる。モノ消費ではなくコト消費なんですね。だから私たちは接客中の会話にも気をつかいました。おいしく食べられる調理法を一言添えればさらに喜ばれます。サービス業であることをあらためて意識することになりました。

いびつな形の野菜を
どう活用するか

——商品開発部門が関わったというオリジナルビールについてお聞かせください

酒井:横浜のビールメーカーさんにご用意いただいた7種のテイストから3つを選定した上で、商品の「顔」となるラベルの制作に着手しました。学内の広場でアンケートを行って意見を募り、学生らしさ、横国らしさとはなにかを少しずつ突き詰めていきます。こうしてでき上がった3種のラベルのうちのひとつは、経済学部の大教室にある高さ5メートルほどの黒板いっぱいに手描きしたキャンパスの木々の絵を撮影したものです。アルファベットの配置を含むデザインもメンバーが手掛けました。美術関係を専攻する者がいたわけではなく、各自が特技を生かして完成にこぎつけたのです。

——ビール以外で開発に取り組んでいるものはありますか?

酒井:2班に分かれて活動しています。ひとつは、みかんを使った入浴剤やアロマオイル。間引きして廃棄されてしまうみかんの有効活用が目的です。企業とは連携せずメンバーだけで試作に奮闘しています。もうひとつは、野菜を使ったパンづくり。野菜不足になりがちなひとり暮らしの学生を意識したものですが、コンセプトを発案した段階であり、具体化はこれからです。

清水:私たちが生産している野菜は、いびつな形をしている場合もあって見栄えに少し難があります。だから、「いっそコロッケに混ぜ込めばいいのではないか」「サラダを作るのが面倒なひとり暮らしの学生向けにスムージーはどうだろう」といった風に、野菜不足の解消をテーマにアイデアを練っています。

人と人とのつながりから
新しい価値が生み出される

——2020年度はコロナ禍の中、どのような活動を行ったのでしょうか

酒井:できることを着実に進めました。ミーティングはリモートで可能ですし、商品開発に伴う試作は各自で行い、結果はオンラインで共有できますから。これまで手薄だった広報にも本格的に乗り出しました。横浜をベースにした産官民学のプラットフォーム「#おたがいハマ」のオンライン番組に出演して、プロジェクトを広くPRできたのは、今後につながる大きな一歩です。

清水:プロジェクトメンバーの一人と私の共同でビジネスコンテストに参加し、優秀賞を受賞しました。テーマは「食×エネルギー」です。都市農業は農家さん同士の距離が近いので、1軒ごとに出荷するのではなく、1台のトラックで集荷すれば無駄が省ける。そんな共同搬送のシステムを提案しました。エネルギーコストを削減し、地球温暖化の防止にも寄与するビジネスプランです。

「EMIRA2021 エネルギー・インカレ」レポート

——後チャレンジしたいことをお聞かせください。

酒井:Agridge Projectからは、人と人とのつながりの大切さを学びました。卒業後は、土地や建物が作り出す空間によって人の交流を促す仕事に携わってみたくて、不動産会社に就職します。農業からは離れますが、地域コミュニティの創出・活性化という根幹は共通していますから、私には自然な流れでした。

清水:温めている企画の実現に向けてがんばります。Agridge Projectがより地域に根付いた存在となるよう、力を注いでいきたいですね。実家はネギ農家ですが、将来は地元の自治体職員になりたい。地域のコミュニティづくりに関わることで、その土地の農業も盛り上げていければと考えています。

掲載:2021年3月

MY MEMORY

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1.畑での農作業の様子2.直売所3.YNUオリジナルビール「ハマノワビール」4.ハマノワビールのイベント販売の様子

アイデアで勝負する4つの柱

Agridge Projectは、商品開発部門のほか、栽培・販売を手掛ける「Agrink」、イベント企画「Agreeting」、技術開発に関する「アグリデザイン」の4部門から構成される。
Agridge

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