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挑戦する横国の学生たち

VENTURE SPIRIT

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コロナ禍の「荒波」を乗り越えたヨット部。
全国大会出場はチームの力で

2020年、全日本学生ヨット選手権大会の団体戦に、「470」と「スナイプ」の両クラスで出場を果たした横国ヨット部。国公立大では快挙と言ってもいい出来事でした。コロナ禍の中、どのようにチームを引っ張っていったのか。主将を務めた高橋さんに話を伺いました。

高橋 幸季

教育学部学校教育課程

高橋 幸季

高校時代の悔しさをバネに
大学体育会でリベンジを誓う

——なぜ横国ヨット部に入部されたのでしょうか?

地元・高松の高校でもヨット部だったのですが、1点の僅差でインターハイ出場を逃してしまったのがすごく悔しくて。大学ではリベンジを果たしたいと考えていました。総じてヨットのレベルが高い関東圏かつ国公立、という希望条件に横国はぴったりだったんです。横国ヨット部では、新入生の勧誘を合格発表後すぐに行います。私自身も、入学前の3月にはヨット部の先輩からSNSで声をかけられました。体験入部でも雰囲気がよく、入部を後押ししてくれました。

——実際に入部しての印象はいかがでしたか?

高校では顧問の先生から指導を受けるのが当たり前でしたが、大学ではあくまで学生主体で取り組むんだな、というのが第一印象です。自分たちで練習メニューや合宿のルールを決め、新入生にも意見が求められる。エンジンの付いたレスキュー艇を学生自身で海に出すのも高校とは違っていました。週末や長期休暇中は合宿も多くなります。共同生活を送る上で、時間の順守や整理整頓はとても大切。先輩からみっちりと指導されました。朝食を作るために朝も早いですが、慣れればそれも楽しい。何と言っても「470とスナイプ※の両クラスで全国大会出場」という部の明確な目標がありましたから、みんなモチベーションは高かったと思います。

※470とスナイプ:大学のヨット選手権大会の団体戦は、この2つのクラスで実施される。470は艇の全長が470cmであることが名前の由来で「ヨンナナマル」と呼ぶ。船体が軽く、スピード勝負となるのが特徴。スナイプは1931年にアメリカで考案された歴史あるヨット。470に比べ船体が重く、スピードに差がつきにくいため、駆け引きがカギとなる

海に出られなくても
できることはたくさんあった

——3年生の10月に主将になったときのお気持ちはいかがでしたか?

同期は5人でしたが、みんな意欲は高かったんです。その中でも私は結構しゃべる方で、スポークスマンの役割も果たせそうだということで、話し合いで自然に決まりました。自分が入部してから全国大会出場を果たせていなかったので「今度こそは」という気持ちが強かったですね。71代の主将として、OBの方々からの期待や歴史の重みを感じていましたし、33人の後輩たちをまとめるプレッシャーもありました。でも、なによりこのヨット部が好きでしたから、1年間思い切り挑戦できる、というワクワク感が勝っていたのだと思います。「これまでと同じことをやっていたら同じ結果で終わってしまう、新しいことにチャレンジだ」と。

——そんな中、コロナ禍が襲います。どのように部活動を継続していったのでしょうか

3月に入り、まず練習が日帰りに変わりました。1、2時間やっていたミーティングも15分ほどに短縮。3月末以降は対面での練習が全面禁止になり、それが7月中旬まで続きました。その間、もちろん海には出られません。そこで取り組んだのはオンラインの活用です。Zoomで集まり、各自が同時に自宅トレーニングを行ったほか、練習量や食事を各自がアプリで管理して共有しました。Zoomミーティングの際に自分たちの競技映像を見返したり、週に1回頑張ったことを発表する場を設けたりも。すべて初めての試みでしたが「自分たちにとってヨットとは何なのか」を問い直す貴重なきっかけにもなったと思います。

仲間との出会いが
かけがえのない財産

——いろいろな困難を乗り越えて、念願の2クラス全国大会出場を成し遂げました。何が決め手になったと思いますか?

自信は結構あったんです。小さな大会でも結果が出ていたし、チーム力を高めるための取り組みも工夫しましたから。私が主将になってから、反省ノートというものを始めたんです。個人の振り返りを部員で共有するのがポイントで、リモートになってからはアプリを活用しました。互いのことを理解し、効果的に成長できるツールになったと自負しています。

団体戦では、陸上でエクセルを使って得点計算を行うチーム、海上で風や潮の情報を分析するチームもあり、実際に競技する三つのヨットをサポートします。そういった総合力が例年より高かったとも思っています。「全員野球」ならぬ「全員ヨット」ですね。

——高橋さんにとって、横国ヨット部とはなんだったでしょうか?

一つのことに熱中できた場所です。とりわけ仲間との出会いはかけがえのないものでした。うちは部員を募集する際に、甘い言葉で勧誘するのではなく、体育会に4年間を捧げる覚悟のある人を集めようというスタンスが他大学とは違うと考えています。関東のヨット部でも一、二を争うくらいに部員数が多いにもかかわらず、退部率が非常に低いことも誇れる部分でしょう。たとえ一人の力は小さくても、チームとしての団結力で大きな成果が得られるという学びを、就職後にも生かしていきたいですね。そして、マイナースポーツであるヨット競技をもっと広めるために、今後もヨットや海に携わっていきたいと思っています。

掲載:2021年3月

MY MEMORY

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1.両クラスでの全国大会出場を決めた日、葉山合宿所にて。2.全日本学生選手権が開催された和歌山セーリングセンターにて。3.470級、葉山でのレースの様子。4.スナイプ級、八景島での練習の様子。

70年超の伝統を誇る実力校

横浜国立大学体育会ヨット部の創部は1950年。国公立大ではトップクラスの実力を備え、私大の強豪と上位を争う。
YNU Sailing Team

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